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私はアンティル vol.37 アンティル・ミーツ・ちんこ パート2

アンティル2006.02.03

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(前回、アンティルは男風呂に入る・・・ことになりました。その続き!)

新しい世界、男風呂に足を踏み入れた私は、片方の手でタオルを持ち、まんこを押さえ、そして、もう片方の手で、いかにも“取りました!”というような形をしている胸を隠しながら、そーっと蛇口に向かった。

『誰にも怪しまれなかったぞ。ホーッ』私は、人気の少ない一角に座り、緊張する鼓動を押さえながら、湯船に向かうチャンスを探っていた。湯船への入り口は一方向。その方向に向かってつかっている人がいるかぎり、私は湯船につかるわけにはいかなかった。男達に背を向け、行水のようにただただ己のカラダにシャワーをかけ続け、脇の下ごしに湯船につかる男達をさりげなくチェックしながら、私はその時を覗っていた。

『今がチャンスだ!』誰もいなくなった湯船を目指し、私は一直線に突き進んだ。チャプン。久しぶりの温泉。しかし、私にはその喜びを噛みしめる余裕など微塵もなかった。『胸を隠さねば』私は、洗い場が見渡せる湯船のへりにしがみつき、私の前に誰も入ることができない環境を作った。女湯の時同様、基本姿勢である水面から目が出るほど深く沈んだ姿勢で、である。ようやく一息。私はその時初めて、お風呂の全体図を見た。無我夢中で気づかなかったが、このお風呂、レトロな感じで味わい深い。
そして入れ墨を入れたオヤジ達が多かった。

私はやくざ風のオヤジにナンパされた経験が2回ほどある。
1回目は駅のホームで声をかけられた。終電を待っていた夜だった。座っている私に声をかけてきたのは、酔っぱらった、50代位のやくざ風の男。
や「どこいくの?」
私「家に帰るんです。」
や「俺、男もいけるんだよね。(スリスリ)どっか寄っていかない?」
男は私の手を掴み、甘い目で見つめていた。私は終電に乗るのを躊躇した。
『上りの電車は人が少ない。もし、人がいなかったら密室になってしまう』
私は電車に一緒に乗るふりをして、締まりかけのドアから飛び降りた。20歳の春である。
2回目は、韓国旅行中の出来事だった。ホテルでお茶を飲んでいると、明らかにやくざな3人組が同じテーブルに腰を降ろした。『やられる!』ドラマの1場面が、もの凄い勢いで再生される。拉致→縛られる→監禁→脅迫→殺し
『もうおしまいだ』今にして思えば、拉致される理由もお金もない私の、一体何を狙うと思ったのだろう。しかし、この時の私は一瞬にして不遇な末路を覚悟してた。
や?「ほれ見ぃ、このにいちゃんキレイな顔立ちしてるじゃろう?」
や?「肌が白くてキレイじゃのう」
や?「俺らの部屋に来んか? このホテルのロイヤルルームじゃけん、気持ちいいぞ」
(方言はイメージです。)
意外な展開に驚く私。やくざでも、“幹部”と付きそうな強面3人。
『ここで断ったら、「秘密を知った者は生かしちゃおけない」と合図を出され、柱の向こうで待機しているヒットマンにやられるかもしれない!』
私の脳裏には、無惨な姿になった私が写っていた。私の答えを待つやくざ3人。ダイヤ入りのロレックスが眩しい。
「あ、あの、私忙しいんで。」
慎重に言葉を発するはずだった私の口から思わず出た答えは、とても間抜けな言葉だった。人間とっさの時には、気の利いた言葉が出ないものだと、この時実感した。

そんな昔の話を思い出しながら、私はお湯に濡れる入れ墨入りの背中を眺めていた。すると、横前方にいた男がこちらに向かって歩いてきた。(無論私に向かってではなく、湯船に向かって、だが・・・)顔をお湯の水面ギリギリまで沈めていた私の目に、ブラブラとちんこが迫ってきた。
『リアリスティック(LPCのディルド)と同じ形だ。』
私は突然の至近距離での登場に驚いた。
子供の頃見た、小便小僧のような小さな幼なじみのちんことも、朧気の記憶の中でただの筒状のものと化した父のちんことも、露出狂のちかんがしごいていた、チョコパンのようなちんことも違う、公衆便所の落書きのようなちんこだった。ディルドのようなキレイな色でもない。(余談だが、私は長い間、男のちんこは興奮すると螺旋の渦を巻いたパンの中にチョコが入ったチョコパンのような形になると信じていた。私が中学生の頃見せられた、ちかんのちんこが、先に行くほど細くなる、螺旋のちんこをしていたからだ。・・・・誰も信じてくれないが、確かに渦を巻いていた・・・・余談おわり)

そしてこの時初めて私は玉袋なるものを見た。
ディルドでは見ることがない、存在感ありありの玉袋。そしてその上で揺れるちんこ。気が付くと、私の目はそのちんことその袋を追っていた。

つづく

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アンティル

アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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