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私はアンティル vol.82 イチゴ事件その21 あ・な・た・の・こ・と・が・き・に・な・る・・・・

アンティル2007.06.06

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あ・な・た・の・こ・と・が・き・に・な・る・・・・

Wの言葉が水に垂らされた油のように私の心を弾いていく。

オンナが好きな私を受け入れたこの世にたった一人の存在、Tを失い、これから私を受け入れない社会とどう戦っていけばいいのかと、孤独のどん底の中でもがいていた私にとって、Wの言葉は驚きを超えた理解不可能な文字の羅列でしかなかった。私は揺れるWのイヤリングを両目で追いながら、ただ文字を順番に反芻していた。

あ・な・た・の・こ・と・が・き・に・な・る・あ・な・た・・・

私はいったいどれだけの沈黙の時を過ごしていたのだろう。ゆらゆら揺れるWのイヤリング。それはまるで催眠術の振り子のように、私の意識を奪っていった。

W「聞いてる?私、あなたのことが気になるって言ってるのよ。」
拡散した意識の中でWの声が針のように私を突付く。
W「アンティル!」
顔色も変えず耳元ばかり見ている私にWは少しイラついた声を上げた。
ア「あ、ごめん。き・に・な・るって何?」
W「私、そういう趣味はないと思っていたけど、今年に入って、ずっーと学校でアンティルのことを見ないではいられなかったの。」
ア「ずーっとみてたの?」
W「本当にずっとってわけじゃないけど。気がつくと目で追っていたの。」
ア「・・・・・」

次第に戻ってくる意識の中で、ようやく私の中でWの言葉が一つの意味をなし始めた。

“あなたのことが気になる”

ア「えっ!!!!だってほとんど話したことないじゃない!」
W「そうだけど。」
ア「なんで??!!!」
W「そんなことわかんないけど、私、もっとアンティルのことが知りたいの。」
ア「知るって何を?!!」
W「アンティルってTと付き合っているんでしょう?そっちの世界の人なんでしょう?」

この場に及んでも「そうだよ」と言えない私。そして“そっちの世界”という言葉に痛んだ私。
『もうそんな言葉には傷つかないはずなのに・・・』
私はこの時、自分の心がパンパンに腫れ上がり、今にも破れそうになっていることを知った。そして“そっちの世界”のただ一人の住人であることを恐れている自分に出会っていた。

ア「・・・・・・・・・」
W「Tとのことも聞かせて!」
ア「・・・・・・・・・・」
独りの世界に閉じこもってしまった私にWは次々と言葉を投げ続けた。
W「オンナの人と付き合うってどんな感じなの?!」
ア「・・・・・・・・」
W「とにかく話したいの。だめ?」
ア「・・・・・・・・」
W「私とこうやってちょくちょく会ってほしいの。」
ア「・・・・・・・・・・・」
W「今日、私の家に来てほしいの。」
すっかり陽の落ちた見知らぬ街の中で、私の運命はごろごろと音を立てて転がっていった。

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アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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