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私はアンティル Vol.108 アンティル海外旅行最終編

アンティル2008.02.27

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セキスポ取材が終り、私は電飾の街、ラスベガスのとあるホテルへ向った。
目的はカジノ。ホテルはパリの町並みを模したデザインになっている。メインロビーからカジノフロアーに続く1階は石畳がひかれ、パリ風のカフェが並んでいる。うっすらと明るい照明に照らされた天井には空が描かれ、夕方のパリの雰囲気を胡散臭く漂わせている。そして極めつけは現物を忠実に再現したというエフェル塔だ。エッフェル塔は1階の天井を突き破り地上へと伸びている。本物を見たことがない私だが、ガイドブックに載っているエッフェル塔そのものだった。

私はラスベガスが好きだ。パリ、ニューヨーク、エジプト、ベニス・・・本気でその街になり切ろうとしている姿が好きなのだ。その中で楽しむカジノはさらに最高だ。トランプと格闘していると、時間を忘れ徹夜でゲームに熱中してしまう。しかし、毎回ラスベガスを訪れるたび、そんな至福の時を壊す人が現われるのだ。私はその人を HOW OLD ARE YOU MANと呼んでいる。呼んでいると言っても心の中で呼んでいるだけなのだが、このHOW OLD ARE YOU MAN。私にとっては宿敵なのだ。

このコラムでも数度となく触れているが私は見かけが若い。たぶんオンナとして見れば年相応なのだろうが、オトコとして見ると38歳が20代そこそこの学生に見えるらしい。ホルモン治療をする前、その原因は髭がないためだと思っていた。23歳時に中学生に間違えられるという体験は、第二次成長を遂げる前のオトコだと思われたことが原因なのだろうと思っていた。しかし、ホルモン治療を経て顎髭をはやしていても、変わらず実年齢より15歳は若く見られ、ひどい時はその差20歳なんてこともざらだった私は、数年前から多くのFTMが抱えるこの“童顔問題”について答えを探そうと行動していた。電車の中でオトコの人をチェックする日々。そして最近、ある要因に辿りついたのだ。“オトコが年齢と共に身につけていくものをFTMは身に付けづらい”それが童顔に見える原因だという仮説だ。

“年齢と共に身に付けていくもの”その正体は“顔の黒ずみ”だと私は睨んでいる。ここで私の観察記録をご紹介しよう。
[20代中盤の特徴]毛穴が広がる。
[20代中盤から後半にかけての特徴]毛穴から毛がはえてくる。
[30代前半の特徴]毛穴にゴミが吸収される。
[30代後半の特徴]毛穴から油が流れ出す。
[40代からの特徴]顔が黒ずんでくる・・・

よく“男の凄みが出てきた”とか“渋くなってきた”と言われるが、その現況はすべてこの“黒ずみ”だと私は考えている。“男の凄み”=“顔が黒ずむことで顔にインパクとがつくため”“渋み”=“黒ずみが層を増し断層かしたありさま”というぐあいだ。いくら手術をしたといってもFTMは男の肌にはならない。だからいくつになっても黒ずみからなる男的な歳の取り方ができないのではないかという結論に至ったのだ。

話はHOW OLD ARE YOU MANに戻る。ラスベガスのカジノは21歳以下の入場ができないことになっている。そのため私は席に着くたびこう聞かれるのだ。
「HOW OLD ARE YOU?」
38歳にもなってパスポートの提示を求められる人は少ないだろう。私は10年近くラスベガスを訪問しているが、いつもいつもこの問いに答えさせられている。
「38!」
そう答えると反応も様々で、いかにもアメリカ人といった風に、両手を肩下で上に向けて首をすくめるポーズを取る人、「失礼しました。」と顔色を変えず対応する人、「若く見えるね」と話しかけてくる人・・・しかし中にはこんな反応もあった。パスポートを見せる前から数名のスタッフで私の事を話しながらジロジロ見→賭けを始める。→パスポートを見せた後嘲笑を含むような視線を堂々と投げかけて→賭けに負けた人が私に舌打ち→“チェ!”→あまりの怒りでアンティル持っているチップを全てかけ勝負する→玉砕
この経験から私はテーブルに着くたび自分から店員に聞くことにした。
「MY FACE LOOK? HOW OLD ARE YOU? 」(私の顔、何歳に見える? のつもり)
その問いに答える人はいない。この質問のせいか、店員は私にパスポート表示を求めなくなった。“笑われる前に自分から相手の懐に入る術”これまでの経験上有効だとは知っていたこの術が、アメリカでも通用するということを私は今回の旅で初めて知った。
“世界は一つだ”と実感したラスベガスだった。

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アンティル

アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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