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今週のコラムは先週の続きになります。

先週の原稿に対して北原さんが、私とクロのセックスや恋愛観の違いは世代の違いなのか、という問いかけをしてくださいました。
たしかに、先の「友だちは元カレ」というコラムで、私は私の世代(三十代前半)と、クロや私の友達のシンさんの世代(四十代後半)の二つの世代を出しました。
まず、セックスについて周りの人たちを見回してみました。

私より若い世代(20代)では、セックスが大好きな人もいるし、私よりセックスをしていない人もいます。その年齢を上げていっても(50代や60代まで)同じことが言えるようです。セックスに関しては世代の違いではないようです。

30歳の可愛いゲイ男子はハッテン場狂いです。以前は毎日行くか、一日に何軒か回っていたらしいのですが、最近は仕事も忙しくなってきてその頻度が少し落ちているようです。「コレだけはやめられないの・・」と少し困ったように言いますが、それは目の前にいるあまりセックスをしない私に、話が通じるかどうかの不安を示している困った顔で、当人は「好きなんだからしょうがない」と割り切っているようです。

彼はアナルセックスが好きでウケの立場ですが、年々アナルの感度が進歩してきていて、相手のチンコがどうであれ、自分の思い通りに、手を使わずに挿入された状態だけでイクことができるようになってきた、と叶恭子さまのようなことを言います。私には何万光年か離れた世界のように聞こえますが、事実だそうです。

私がよく行くゲイバーで、ある日、カウンターにずらりと並んだ様々な年齢のゲイ男性たちが全員、アナルセックスをしたことがない、したいとは思わない、と答えた夜のことを思い出しました。彼らがどんなセックスを好むかというと、バニラセックスと呼ばれる、互いの体を触ったりフェラチオをしたりしてイクという(イカなくてもいい)、挿入を伴わないセックスです。
アナルセックスが好きな私の職場のお姉さんは、「そんなのセックスじゃないわ、ペッティングよ!」と一蹴しますが、アナルが性器かどうかという認知度からすると、アナルセックスすらセックスじゃないとひっくり返される可能性もあるわ、という気もするのでとりあえず私は「叶恭子男子」を応援しなくてはいけない、とわけがわからなくなりますが、同じ「セックス」という表現でも人によっていろいろあることはわかりました。

けれど「恭子男子」は、「恋愛はもうしない」と言いました。なんで? と聞くと「別れがツライから」と答えます。セックスをすることは幸せだけど、恋愛すると不幸になると思っているようです。

幸か不幸かの話が出てきたところで、私は「三位一体」の話を思い出しました。「恋愛、セックス、結婚の流れを一人の相手と遂行することが幸せである」というアレです。

日本ではまだ同性婚が認められていないので、「恋愛、セックス、パートナーシップ」と置き換えてみます。これまで、「セックス」を突出して書いてきましたが、「恭子くん」にとって「恋愛」を持ち出すと不幸という言葉が現れるのは、この三位一体からはずれてしまうことによる不安が大きいのかもしれません。

私自身は、なぜだか、この三つを並べてつなげることに疲労を覚えていて、その中で一つでも楽しめる分野があればそれでいいじゃないか、というふうに思っています。

先週の「友だちは元カレ」の話を、職場のオーラちゃんにしたところ、オーラちゃんは信じられない、と首を振りました。元カレがその後友だちになる、ということに対してです。恋愛とセックスをして付き合って別れた人には興味がなくなるそうです。連絡も途絶えます。私と似ています。けれどオーラちゃんも、元カレと仲良くしている友人を何人も知っているそうです。私たちと彼らの違いは、恋愛観の違いなのでしょうか。

もう一度、私が付き合っている(段々、ほんとなの? という気も)クロの話を振り返ってみます。クロは好きになった男子とまずセックスをします。その時は恋愛感情が含まれています。そのあとはセックスを含んだお付き合いが始まります。そしてセックスがなくなる頃に別れ(今まで長くて4年だそうです。私は2週間)、その相手は元カレとして友だち付き合いが始まります。クロはまた、他にセックスをしたいと思う好きな男子にアタックします。

そこへ私の友達のシンさんの話をかぶせていくと、その元カレはとても大事な存在であり、現在の彼氏ともいずれそういう関係を築いていけるといいな、と思っているということになります。

そうすると、単純な三位一体の話ではなくなってくるようです。型としては三つのアイテムを使っていますが、最後のパートナーシップのところにいる人が、最初の相手ではなく、前に付き合っていた人になっています。そういう大事な存在としての元カレが何人か増えてくることによって、現在、恋愛とセックスをしている相手は特定の一人ですが、パートナーシップの意味合いを持つ相手は複数になっている、ということになります。過去に恋愛とセックスのあった友達は(恋愛やセックスの時点で複数になる場合もあると思われますが)、セックスを介在しない長年の友情とは違う、どちらかというと長年連れ添ったという意味に似た友達のようです。

クロは、元カレとはセックスしなくなって別れたわけだから、もうセックスはしない関係になる、と言います。かつての三位一体の流れで、一人の人と関係を続けていくことを目指している方法でも二人の間にセックスがなくなる状況はあって、それでもその相手と付き合っていく選択をするかどうか、という問題があるように思いますが、同じような状況になって別れる選択をしたけれど、「その人が自分にとって今後も重要な存在であることに変わりはない」という帰結をおもしろく思います。
けれど、別れたらハイおしまいで、今付き合っているのにセックス(アナルもバニラも)しない私は、クロにとってなんなんでしょう。「浮気はしない」と宣言しながら、「浮気(セックス)をするから」と脅し続けるクロは、なんだか苦しそうです。私のせいで、これまで自分が選んできた方法に乗ることができないのだと思われます。

そんな私にオーラちゃんは、「今までの話に出て来た人の中で、茶屋ちゃんが一番ダメ人間です」と審判を下しました。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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