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私はアンティル Vol.130 イチゴ事件その56 初めての合コン4

アンティル2009.01.16

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ア「私はアンティルです」
私の第一声に男達の眉が動く。
“私はアンティル”
あの時私が口にしたこの言葉は実は正しくない。
「人はアンティルです」
“私”という“オンナ”が口にする一人称を言わないために編み出した私の一人称“人”。合コンの場でも、いや男達が見ているTのいる空間だから私は混乱を覚悟で私を表した。

ア 「人はアンティルです。」
橋田「(ヒソヒソ)おい、どういう意味だよこの挨拶。」

橋田が隣の高梨に耳打ちする。

ユウコ「あのね、アンティルは自分のことを“人”っていうの!」

ユウコが吐き捨てるように説明をする。

ア「人はユウコとTの高校からの友達です。今日は来る予定ではなかったのですが、焼き鳥のお店で集まるというのでやってきました。好物は鳥皮です。以上」

本当の理由を言えず、私は合コンに来た理由を繕う。それは男が好きでここに来たわけではないというTへのアピールでもあった。しかし鳥皮が好きなのは真実である。
私の自己紹介が終わり合コンは合コンらしい雰囲気を取り戻した。最近行ったCLUBの話。元カノの話し。そして理想の男像についての話し。店員の大きな声や客達の話し声が交じり合い、隣の人の声を聞き取るのもやっとの空間で、私を除く全ての人が楽しげに盛り上がっている。その中で、私は誰にも話しかけられることも話すこともなく、私の前で山盛りになっている鳥皮を食べ続けた。

安西「Tちゃん本当に彼氏いないの?そんなはずないじゃん!!」
3杯目のビールのピッチャーが届いた頃、安西が酔い始めたTに質問を始めた。
T「うん、ホントは一応いるんだけど・・・・」
衝撃のあまり収縮した心臓がその音を私の耳まで届ける。
安西「やっぱりね。どんなオトコ?!」
T「いいじゃん、そんなこと。たいしたことないし。」
“たいしたことはない”
その言葉に私は少し嬉しくなる。Kと付き合っているといってもうまくいっていないんじゃないだろうか?!私に、まだ少しでも気持ちが残っているのではないだろうか?!二人の会話に私は釘付けになる。

安西「いくつなの?」
T「2つ下。高2だけど・・・」
安西「年下かぁ、やるねTちゃん。」
T「そんなことないよ。」

照れから出た言葉とは明らかに違う呟きのようなTの否定。そこになんの意味があるのか、私は聞かずにはいられなかった。

ア「でも付き合って長いんでしょう?」
T「・・・・」
安西「そうなんだ!!ラブラブなんじゃん!!」
T「違うよ!!まだ4ヶ月ぐらいだし、子供だし。」
ア「今日は合コンに行くこと知ってるの?」
T「・・・・」
安西「可哀想!俺だったらすごい嫌かも、なぁ加藤?!」
女子が苦手だというラグビー部の男、加藤が静かな口調で話し始める。
加藤「うん、嫌だよ俺も。」
T「違うの、違うの!あんまりうまくいっていなくて、そういう関係じゃないの」
安西「エッ!じゃあチャンスありってこと?!よかったな加藤。」
加藤とTの目が微妙な視線を交わす。私の微かな期待は砕け、新たな苦痛が飛び込んできた。
加藤「喧嘩でもしたの?」
T「いつも喧嘩ばっかりでもう嫌なの。」
加藤「原因は?」
T「子供すぎるから。やっぱりみんなくらい大人じゃないと。」
・・・・・・・・・・・・
同世代の男達を大人というTの目は加藤に向けてメッセージを放つ。
加藤「俺も高校の頃は幼かったもんな。」
Tと加藤、二人の世界が広がっていく。私が横にいるとうことはTにとってどうでもいいことのようだ。それは酒のせいなのか、それとも・・・
トイレに行ったTを追うように、私は席を立った。

ア「どういうことT!あの時、バイトを一緒にやっていた時、もうKと付き合っていたの?!!」
T「もう、どうだっていいじゃない。」
ア「じゃあ、なんでうちに来たの?セックスしたの?!!!」
T「そんなことここで、言わないでよ。聞かれたらどうすんのよ。加藤君達にも変なこと言わないでよ!気持ち悪い人だって思われないようにしてよ!!」
ア「気持ち悪いって・・・どういうこと」
T「・・・・・・・」
ユウコ「あんた達、何やってんの?」
ユウコがやってきた途端、Tの顔が笑い出す。
T「ちょっと酔っちゃって。」
ユウコ「大丈夫?!」
T「うん。」
ユウコ「ねぇ加藤君、あんたのこと気に入ったらしいよ。Tも好みなんじゃない?K君と別れて付き合っちゃえば?」
ア「ユウコ、K君に会ったことあるの?」
ユウコ「あるよ、この前うちの彼氏と4人でドライブ行ったもんね。」
Tの赤い車が私の頭の中を走る。Tが手に入れた、みんなに認められる愛。
気持ち悪がられることのない正しい関係。嫉妬とも怒りとも悲しみとも言えない孤独が私のカラダを包み込んだ。
ユウコ「じゃあ、私戻るね。」
T「私も行く。」
化粧台の鏡に映る私を私は見ることができなかった。

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アンティル

アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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