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 時はおよそ130年前の1880年、一代なのに王朝と呼ばれたヴィクトリア女王の統治する英国はロンドンで、それは誕生しました。ええ、それとはバイブ。女の乾いた心と体を癒す、我々ラブピファンの愛して止まぬ性具、電動バイブレーターでございます。

表題の「ヒステリア」とは、日本ではヒステリーと言われ、今でも時々耳にする、感情的なる女性を揶揄する言葉でございました。

わたし自身バイブとヒステリーが結びつくとは、この映画を観るまで思いもよらぬことでした。当時のヨーロッパでは、女心の不安定なるは総じてヒステリアという不治の病と信じられていたといいます。症状緩和のために子宮摘出まで試みられたというから驚きです。そんな中、より効果的な治療法を求めて電動バイブが考案されるのですが、本作品はバイブ考案者の婦人精神科医師と、まるでバイブレーターそのもののように、お高くとまった上流社会を揺るがすフェミニストな社会活動家との出会いの物語でございます。ロードショウはちょうど一年前の今頃でしたから、すでに映画館でご覧になった方も多いことでしょう。しかしどうしても、お勧め映画DVD紹介、新シリーズ第一回目はコレで幕開けたかったのでございます。ええ、何と言ってもバイブですから。

 ヒステリーの治療と称して男性医師に電マをあてがわれ身もだえる女性たち。やや!これはいったい!どんなに突っ込みどころ満載なのであろうかと、見逃すまいぞと、挑むような気持ちで観始めたんですが、結論から言いますね。突っ込みどころ、ありませんでした!実に気持ちの良い、観終わったあとには晴れ晴れと生きる勇気の湧いてくる、好感度の高い良作でございました。監督曰く「ロマンチックコメディーを目指した」ということですが、そうと聞いて思い当たるのは、なんとディズニーのミュージカル映画、史上最もあり得ない魔法の、あの、「魔法にかけられて」です。ええ、全くジャンル違いますよね。ストーリーに似た所でもあるのでしょうか、いいえ、そんなことはありません。でも、何か通じるものがある。それは何だろう?知りたくてもう一度「ヒステリア」を観ました。そして合点がいったのです。ああ、そこには嫌な男が、女を女であるゆえに見下すような唾棄すべき嫌な男がいないのでした。一方的で妄想にまみれた唾棄すべき身勝手な男の性欲が一つも描かれていないのでした。それってわたしたちの現実からはかけ離れている、ディズニー並みのファンタジーだと感じた次第です。更に、作中描かれる女性たちのエクスタシーは、なんら誇張されることなく真面目で、一人一人のユニークさそのままで、本当に気持ちいいの!って親しく語りかけてくるようなのです。未亡人やらご高齢やらの患者も多いのですが、皆、自身の欲望に実に正直です。真っ当です。女優さんらの自然な演技に目から鱗の落ちる思いでした。あそこで描かれたエクスタシーこそが、この映画の真髄なんだと思います。

 さて、社会から科せられたさまざまな抑圧を吹っ飛ばして、生きたいように生きようとするしなやかで力強い姿、ここでは、それをこそ「女らしい生き方」と言わせていただきますが、130年前も今もそのことはあまり変わっていないように思います。1880年、まだ何処の国にも女性参政権はありませんでしたし、英国では財産権もなかった。大学への進学も許されず、職業を持つことも良しとされなかった。当時に比べて女性を取り巻く状況は随分変わったように思えます。しかし、わたしたちはいまだに「生理中の女性はノーマルじゃない。異常。だから政治家に向かない」とか「生理のあがった女は生きてる無駄」とか日々言われ続ける始末です。しかしながら、そんなことで自由な女の行く手を阻もうとするなら、この映画パンフレットの表紙デザインよろしく、電動バイブを拳銃のように斜に構えて、口元に不適な笑みを浮かべ、ポーズを決めて、相手をゾッとさせてやるにしくはなし、とか思いました。

2011年 英/仏/独
監督 ターニャ・ウェクスラー
主演 シャーロット・ダリンプル/マギー・ギレンホール
   モーティマー・グランビル医師/ヒュー・ダンシー

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高橋フミコ(たかはし・ふみこ)

60年しし座の生まれ
美大出てパフォーマンスアートなどぼちぼち
2003年乳がんに罹患
同年から約2年半ラブピースクラブWebsiteで『半社会的おっぱい』連載
2006年『ぽっかり穴の空いた胸で考えた』バジリコ(株)より出版(ラブピのコラムが本になりました)
都内で愛猫3匹と集団生活
 

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