ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。Since 1996

飯島愛さんのこと。

北原みのり2008.12.25

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飯島愛さんの突然の死。
6年前にナンシー関さんが突然亡くなられたこと時に感じた、「さみしい。本当にさみしい。」という思いにとても近い。この人の仕事をもう観られないのか、というさみしさと、そしてこの人が「発信してきたものの凄さ」に圧倒されるような思いで。
 
 
今年の8月、ラブピースクラブに飯島愛さんが突然やって来られた。私はその時いなかったのだが、スタッフには、年内に「アダルトグッズショップ」をご自身で立ち上げるとのことで、販売用のバイブを全て自分で一つ一つ選び、試している最中だというお話をされたという。
 
 
ラブピースクラブからも商品をたくさん買ってくれて、販売してくれることになっていた。すでにいくつか商品の注文を受け、発送も終わっていた。
「かわいくて、オシャレなバイブ屋をやりたい、バイブのイメージを変えたい」という飯島さんの方向性や商品のセレクトはラブピースクラブと似ていて、正直焦る思いもあった。
飯島さんがバイブ屋をやればバイブがもっとオープンになるね! と、女としては嬉しい気分いっぱいなのだけれど、ラブピースクラブとしてはこれ以上ない最強の競合相手になるわけで、喜びつつ、焦る思い。ラブピースクラブのスタッフみんなで、ラブピももっとがんばらなくっちゃね! と大変な”ライバル”を前に、背筋を伸ばす気分でいたのだ。
 
 
「飯島さん、どうしたんだろうね」
そんなことを今月に入ってから何度かスタッフと話した。もうオープンする頃なのにねっ・・・て。そしてこの訃報。
日本の女のセックス事情が、これでまた10年は歩みが遅くなったと思う。飯島さんが表に立って、セックスを真摯に楽しく語ることで絶対に変わったんだろう「何か」を、私たちは失った。
 
 
仕事が順調だった時期に芸能界を辞め、そしてバイブ屋を始めようとしていた飯島愛さん。こんな人、今までいただろうか? バイブ屋よ、バイブ屋。芸能人がよくやるレストランとかじゃないんだよ、バイブ屋。飯島さんのブログには、コンドームを一つ一つ試している、というようなことが書いてあったが、本当に一つ一つ、全てのバイブと全てのローションと全てのコンドーム、自身が売られようとするものをきちんと確かめ、マジメに発信されようとしていた。身体のこと、セックスのこと、「商売」だけではなく、本気で考えていた。
 
 
80年代、アダルトビデオ業界には、黒木香や豊丸のような、欲望に肯定的で野獣のようにセックスを謳歌するかっこいい女たちがいた。男を怖がらすほどの女の欲望の深さを見せた女優に私は強く影響を受けたし、今の私の仕事はその時代の「空気」があったからだこそと思う。そういう意味で言えば、飯島愛さんのAVは、とてもかわいらしく、本人の欲望というよりは、「欲望されることの欲望」みたいなものに包まれているようで、物足りなく感じていた。
それでも「欲望される」ことを「欲望する」女たちの「欲望」を、飯島愛さんは90年代に10代を送った女子たちに向けて、ストレートに解放したように思う。いわゆるコギャル世代で、飯島愛さんを嫌いな女子なんて、いるんだろうか。男に媚びず、女子受けの「可愛さ」を追求しつつ、セックスはこんなにも簡単なのに、愛は難しいよね、っていう女子の本音を、肉体と言葉と表現の全てで女子に伝えることができた人。
 
 
女の子ならではの傷付き方、というのがこの国にはある。
そんな傷付き方や、痛みというものを、まずは肉体や欲望を肯定して、あなた間違っていないよ、というような方向でやさしくみせてくれるような人。女の子のタブーを全て取り去ってくれ、傷付いた女の子をやさしく抱いてくれるような。そんな役割を飯島さんはしてきたし、そしてこれから、ますますそういう方面で、表現を発揮する人だと思っていた。
考えれば考えるほど、あまりに凄い人だと、思う。
 
 
残念でたまらない。早すぎる、としか言えない。失ったものの大きさを考えると、かなしすぎる。
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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