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TOKKOを見て改めて思う『永遠のゼロ』の単純。

高橋フミコ2014.04.29

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突然ですが、「神風特攻隊」ってお聞きになったことあります?「永遠の0」を思い浮かべたりなさいますか?で、岡田准一君機上の最敬礼をオナネタにしたりしてませんか?ええ、オナネタで良いと思います。何処からともなく現れて何も言わずに去って行く、クラシカルでちょっと小さめニッポン男児、コミニュケーションなど何処吹く風の孤立無縁。何だったのかなー(謎)的な感じで。
 さて、「神風特攻隊」とは第二次世界大戦末期、日本海軍が主に少年兵を犠牲に断行した、驚異の自爆作戦の名称です。日系二世であるリサ・モリモト監督は叔父の死後、彼が元特攻隊訓練兵であったことを知ります。アメリカでTOKKOは恐るべき狂信者として知られていて、温厚な叔父とのイメージギャップは甚だしく、様々な疑問を解くべく、亡き叔父に重ねて、元特攻隊員を訪ねる旅を始めます。それがこのドキュメンタリー映画「TOKKO」です。そう、特攻隊を賛美しているとして賛否両論の問題作「永遠の0」と、実によく似た滑り出しなのです。
 「永遠の0」のテーマは、主人公の自分探しです。祖父を通じて、愛するものを守るため自己犠牲受諾に至った戦時の若者を内面化していきます。そこには元々の自分らしさや時代を検証する目線はありません。本当に不思議なほど皆無です。あるのはただ、守る!と守られるものという単純な対比、ヒーローと腰抜けという単純な対比、戦時と平和時という単純な対比、自己犠牲と無責任という単純な対比、男らしさと女らしさ(恋愛)という単純な対比と、まぁ、いろいろありますがとにかく単純な対比過ぎるんです。

tokko.jpg方や「TOKKO」です。対比しましょう。監督が日本と縁のある外国人だから、或いは女性だからこの映画は可能だったと言っていいように思います。
冷静でありながら話者の傍らに寄り添うような視線と、多方向から歴史的事実を炙り出そうとする視点。それはこの映画に、敵味方の一線を超えた独特な位置を与えています。ヒーローはいかにしてヒーローに成ったのかではなく、戦況やプロパガンダや当事者の心情、或いは敵側の体験も交え、特攻とは何だったのかに迫真しようとするのです。元特攻隊員だけでなく、作家や研究者など、特攻の言説に関わる人たちへの幅広いインタビューが盛り込まれています。
その中でいち早く「狂信者」のイメージを翻すのは、なんと特攻第1号の関行男(セキツラオ)という人の逸話です。彼は今でも軍神として勇ましく飾り立てられ靖国に祭られています。さて、命令を受けた関は、突撃前夜、忍び込んできた新聞記者に本音を語ったといいます。
曰く、「僕みたいに敵艦を爆撃してなおかつ無事に帰還することのできる優秀なパイロットを殺すなんて、日本もおしまいだ。僕は明日、天皇陛下やお国のために死ぬんじゃないよ」と。
刺激的なお話です。そしてこの映画の全編には、元特攻隊員の発するメッセージ、誰にもしゃべったことのない、今、監督に初めて語るというような言葉が、たくさんたくさん溢れているのです。その一人中島一雄さんは、海軍のカッコいい飛行機に憧れて予科練に入隊、飛行経験もないまま特攻隊に指名されました。にこにこしながらも淋しさを隠せない様子で、「トイレの落書きに、今までは人のことと思いしに自分が行くとはこりゃたまらん、と書いてあった。ははは。張り出された名簿になんと俺の名前もあるじゃないの。突撃式のときは内心アジャパー!と思ってたよ」と。
昨年の8月15日、戦没者追悼式典での安倍総理の式辞、「あなた方の犠牲の上に、いま、わたしたちが享受する平和と繁栄があります。そのことを片時たりとも忘れません」とありました。
わたしには何だかそれは「犠牲になって下さりありがとうございます」と言っているように聞こえてしまい、正直、胸がムカムカしました。この式辞は、歴代総理が必ず触れてきたアジア各国への戦争責任には言及せず、戦争放棄の文言を省略し、国内向け発言に徹底したと言われています。しかしそれと、江名武彦さんの語った言葉はとてもよく似ています。
江名さんは学徒動員で招集され、出撃後はエンジン不調で引き返し一命を取り留めました。その語り口は、いつでも沈着冷静。「今日の平和は、亡くなった戦友の大いなる犠牲の上にあるのです。戦争は二度と起こさないという誓いを立てました」字面の意味は同じです、が、しかし、なぜこうも違うのでしょうか。エンターテイメントやメディアによる表現は、あっちにもこっちにも容易に転がってゆくものなのかもしれません。それはまた戦争同様、恐ろしいことであると「永遠の0」で知りました。だからこそお勧めします。「TOKKO」是非観て下さい。
「TOKKOー特攻ー」 アメリカ ドキュメンタリー映画 2007年 配給 シネカノン
DVD 特典映像「TOKKO 特攻」その後~もう一つの旅~/監督&プロデューサー インタビュー その他
監督/プロデューサー:リサ・モリモト/日系二世アメリカ人、映画とテレビを中心に製作、脚本、監督
プロデューサー/構成:リンダ・ホーグランド/日本生まれアメリカ人、映画字幕、日本語小説、落語など翻訳、日本文化紹介

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高橋フミコ(たかはし・ふみこ)

60年しし座の生まれ
美大出てパフォーマンスアートなどぼちぼち
2003年乳がんに罹患
同年から約2年半ラブピースクラブWebsiteで『半社会的おっぱい』連載
2006年『ぽっかり穴の空いた胸で考えた』バジリコ(株)より出版(ラブピのコラムが本になりました)
都内で愛猫3匹と集団生活
 

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