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AKB48とJKリフレ

北原みのり2013.02.04

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AKB48の峯岸みなみさんが坊主になって謝罪するYouTubeを見た。ワイドショーなどでも「やりすぎ」「体罰のようだ」「かわいそう」といった批判の声の方が大きいように感じるが、一方で「AKB48のルールは恋愛禁止なんだから、あたりまえ」「彼女は自分の意志でやっているんだ!」「関係ない婆が口を出すな」といった男たちの声も大きい。小林よしのり氏は「(AKB48批判は)魔女狩りだ!」とご自身のHPで怒っていたが、まるで自分のオモチャをけなされたオタクが、「これは○○年代ものの○○型で○○という派閥から生まれた○○だから○○で正しいんだよっ!」とか、なんかこっちにとっちゃどうでもいい意味不明の情報を金切り声をあげているように聞こえる。
 
AKB48の女性たちを否定する気持ちはないけれど、大きなリボンを頭につけて、幼稚な表情で踊り、セックスしないって約束をする女性グループが”国民的アイドル”であることには、ずっと違和感があった。彼女たちの「総選挙」が生放送されたり、その結果を大新聞が報道したり、「私と赤ちゃんつくらない? ネットでね!」の大島優子さんの広告に野田前首相が「少子化対策として期待」とコメントするような事態に、この国の男のロリコン層の厚さをしみじみと感じ続けてきた。
 
先日、都内のJKリフレが相次いで労働基準法違反で摘発されたニュースを読んだ。JKリフレとは、女子高生リフレクソロジーの略とか。10代の女性(18歳未満)が、パジャマなどを着て添い寝をしたり、足裏マッサージをしたり、肩マッサージしてくれたり、追加料金を出すとハグしてくれたり、希望すれば「びんた」してくれたりするサービスで、性器への接触がないから“性風俗”ではないため、今まで放置されたまま増え続けてきた。信じがたいことだけど、ほとんどのお店が本物の女子高校生を募集していたという。本来ならばその経営感覚の”乱れぶり”を問題にするべき話だと思うけれど、驚いたのは「お小遣い感覚で働く今ドキ女子高校生の感覚の乱れ」のような報道をする新聞があったこと(私が読んだのは西日本新聞2/3。他にもありますか? あったら教えてください)。経営者の倫理や、女の子に添い寝を求める男の性欲の異常さを問題にするべき話が、いつもこうやって、女側の「主体性」「意識」の問題になっていくのだ。
 
JKリフレで働く女の子たちは、きっと自分を色んな言葉で納得させてきたことだろう。「頑張れば頑張るだけ、評価される」し、「最初はキモいけど慣れたら平気」だし、「お客さんが喜んでくれる」し。やりがいもあるしお金も稼げる仕事だよね! って。(「   」内は様々な報道から拾ってきた働いているJKの言葉です)。
これらの言葉を読みながら、AKB48の女性たちも同じなんじゃないだろうか、と思った。男の性欲がダダ漏れした現場で、真実から目を背け耳をふさいだ状態で、笑い続けていく道。そうすれば、誰も傷つかない。みんな、喜ぶ。自分の気持ちは、後回しでいいんだから・・・・。JKリフレとAKB48は似ている。AKB48は手の届きやすいアイドルと言われていたが、敷居の高いJKリフレのように思えてくるし。JKリフレはAKB48になれないこの国の女の子たちのもう一つの生き方にみえてくる。
そんな風に女の子は、いつまで”男”を「理解」し「賢く」立ち回ろうとし続けなければいけないんだろう。
 
風俗なのに風俗ではないと自分を納得させ。
ロリコンなのに「これは夢を与える仕事だ」と自分を納得させ。
そんな「ひたむきさ」を全く無責任に楽しむことは私はできないから、AKB48の出ているものはなるべく見ないできた。でも、もしかしたら、「きちんと見る」べきなのかもしれないって思いはじめた。誤解がないように言うが、「ロリコン」という性欲のあり方が犯罪とは言っていない。頭の中のファンタジーはいくらでも自由だとは思う。でもそのために、リアルな女の子たちがどれだけ消費されている? ロリコンを恥ずかしいとすらも思わずに、消費する感覚が蔓延している社会は病んではいないか?
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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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