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「超ノンケ」

茶屋ひろし2014.10.09

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この夏から、社長の指示で、店長研修に通い始めました。取次ぎ会社の企画物で、全国の書店から、店長や地域マネージャー、経営者の二代目などを集めて、経営とは何かを学ぶセミナーです。二ヶ月に一度に三日間ずつ、御茶ノ水で開かれています。


北海道から岡山まで、集まった受講生は23人です。内、女性は3人です。
最初にした自己紹介で、私はゲイだと言いませんでした。
東京でふらふらしていたところを大阪に呼び戻されました、と言ったらなぜか受けて、その夜の飲み会で、東京で何をしていたのかを何人かに尋ねられました。同窓会のときは、この時点でカミングアウトをしていましたが、さすがに初対面の人ばかりなことと、このセミナーが半年続くことを思ってためらいました。


とりあえず秘密にしていたら、一部の男たちが盛り上がってしまって、ミステリアスの烙印を押されてしまいました。面白くなった、と私もそのまま話を引っ張りました。
ダンサーですか、と訊かれて、そんなわけないじゃない、とは言わずに否定して、話し方が京都の人みたい、と言われて、よく言われます、と答えます。


隣に座っていた宇都宮の書店の二代目(男)が、新宿(の友達の店)に行かなくちゃ、と腰を浮かせました。
出版社の営業の男が、すかさず、「二丁目に行くの?」とからかいます。「実は・・」と宇都宮も笑いながら片手を頬に寄せて受け流し、営業は彼の股間や尻を触りました。
ちょっとそれは私の役目・・! と思ったのと同時に、イラっとしてしまいました。宇都宮も営業もゲイではないからです。
その前日に、実際、二丁目で飲んでいた私の目の前で笑いが起きています。


この飲み会の前に、20社ほどの出版社の営業の人たちとの懇親会がありました。その席でも似たようなことがありました。
よくメールで新刊情報をくれている出版社のこれまた男と、初めて対面して、先日復刊された橋本治の本の話になったとき、彼は、「根強い人気がありますよね、あの人。まあ、ホモですけどね」と軽く笑いました。
なに、それ。
イラっとした私は、「私もですけどね!」とは言えませんでした。
言えばよかった。なんだったんだろう、あの文脈は・・嫉妬でしょうか。


そうした「からかい」が、目の前で立て続けに起こりました。いつもはカミングアウトしてしまうので久しくそういうのを経験していなかった私は、とりあえず、「ノンケ・・!」と心のなかで罵ってみました。


結局、第一回目は言い出す機会をもてず、なんだかもやっとしたまま、大阪に帰ってきました。そういう状態だったからでしょうか、ある漫画家のツィッターにつぶやかれていた、「BL好きの人におススメです」という何気ない一言に、目の前でシャッターを下ろされたような気分になりました。


BLはリアルじゃないのにゲイだと言う・・、というふうに捉えて淋しい気持ちになってしまった、ということなのですが、ボーイズラブに対してそんなふうに思うときがくるなんて・・! とちょっとびっくりしました。
新宿二丁目で、たまにBLの存在に怒っているゲイの人に出くわすと、ファンタジーなんだからべつにいいじゃん、と、取り合おうとしなかった自分を省みました。


そうか、ノンケ社会の中をクローゼットで生きるということは、こういう感覚を何度も味わうものなのね。
そしたら私は、二回目のときはもう言ってしまうかもしれない・・と、それでもとくに覚悟もなく研修に行った先月、あろうことか、飲み会でアウティングされてしまいました。


毎度の飲み会で、25歳の男子が、いつのまにか目の前に座っていて、「茶屋さん、昨日の帰り道、コンビニに走っていたとき、手をヒラヒラさせていましたよね」と、突然、詰めよって来ました。「そ、そう?」と動揺する私です(本当にわからない・・)。
すると隣で、前回私のことを「ダンサー」だと言った人が、「茶屋さんは手の動きがしなやかなんですよね」とそれを受けます。
やだ、囲まれた、と思ったら、25歳が、「僕は茶屋さんのような人を知っています」と断言します。「それで茶屋さんは東京で何をしていたんですか」


途中から笑ってしまって、二丁目で働いていました、と白状しました。ノンケの25歳は、大学のときにセクシャルマイノリティーについてレポートを書いたことがあって、そのときに何度か二丁目のゲイバーに通って、そこでゲイの友達も出来たから、私を見てピンと来たそうです。
自分から促したくせに、そのあとは弁解するように、「カミングアウトはデリケートな問題だから、周りが強要してはいけないんですよね!」とか、「ゲイはみんながみんな、オネエではないんですよね!」と、勉強したことを吹聴してくれました。
オマエが言うな、オレに言うな、と笑っていると、ダンサー男子が横から、「さっきから何の話をしているんですか、ニチョナントカって何のことですか?」と訊いてくるのでずっこけました。


だから、私がゲイだという話なんだけど・・、と言うと、えー! と本当に驚いて、「俺は、その手の動きのしなやかさから、ダンサーじゃないなら、パチプロだったんじゃないか、と思っていました」と答えました。超ノンケ・・・!
ゲイに会ったのは初めてだそうです。どうぞよろしく。

 

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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