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20代の頃は想像もしなかった、子どものいる生活

アンティル2016.01.28

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最近、レズビアンの若い友人と話していると、出産の話しになることが多い。女同士のカップルの未来に子どもを作るという選択があるなんて、私が20代の頃は想像もしなかった。私はというと・・・子どものいる生活を楽しく想像しながら想像の世界の中で苦悩を味わっている。

朝起きて、子供にミルクをあげて、おしめを替え、服を着せ、ベビーカーを押しながら仕事場に向かう。そこにもベビーベットやら、ほ乳瓶やら、おむつがあって、仕事をしながらその横でその子をあやす。仕事はちょっとセーブした。泣きやまない時はどうしよう?!私は苛つくことなく仕事を中断して、子供を寝かせることができるのか・・・。集中している時に宅急便屋さんが来るだけでも腹が立つのに・・・。私は苛立ちから子供を泣かしたままにするのではないか?・・私とはそんな未熟な人間なのではないか?そんな想像をすると、子供との生活がリアルなものとなり、子供を持つ資格がある人間かなどと自問自答してしまう。

ちょっと大きくなって娘は2才。まだ幼稚園には通っていない。相変わらず仕事場に共に通っている。仕事場には子供が怪我をしないためのやわらかなマットと小型滑り台、人形、ボールが転がっている。もう2年も通っているからか、娘はこの場所で自分の世界を創ることにすっかり慣れ、遊びに没頭している。私も仕事に集中できる時間が増えてきた。しかし、その頃の私には悩みがあった。
最近娘が私をパパと呼ぶのだ。どうやら最近見始めた子供向けの番組の影響らしく。この世の家族構成はパパとママと子供というのが普通だと認識し始めている。いかん!これまでマパと教え、そう呼ばれていたのに、もうマパではなくパパになってしまっているし・・・。これから私のセクシャリティをどう伝えたらいいものか、それをこの子はどう理解してくれるか、最近そのことばかりが気がかりだ。そろそろ仕事を辞め、専業主婦になり、成長する子供と向きあう時間を増やした方がいいのではとも考えている。

幼稚園に入り、毎日送り迎えをする生活が始まった。ぐんぐんと成長する娘をうれしく感じながらも、私をすっかりパパだと思っている娘に、本当のことを言うべきか、性別を変え一生黙っているべきかなどとも考えている。バザーの手伝いやら何やらをやることが増え、他のママたちとの接点も増えた。このママたちに私のセクシャリティを知られまいかという心配も抱え悩みは尽きない。

年長さんになった娘に私はまだ話せないでいる。そして進路を考えている。いろんな人種が集まるインターナショナルスクールに行けば、私への理解の土壌ができるのでは?もしも地元の学校に通ったら、私のことが知れ渡り、いじめられるかもしれない・・・。そうだ!インターにしよう。
しかしインターに行くには、親の面接が合否の決め手となるはずだ。私のような親ではまず合格しないのではないか?高い授業代は払えるのか?でも公立には行かせられない!やはり性別変更は必須か!でも性別を男性にして私はそれでいいのだろうか・・・・

そしてついに小学生になり、私は人生最大のカミングアウトをする・・・

この後の結末は、
1、子供グレル
2、血がつながっていないことを知って、口を聞かなくなる。それが一生続く。
3、あなたなんか親じゃない!と罵られる。
4、見事に成長し、なんの問題もなく仲良く生活をする。


こんなストーリーを考えては、その時どうしたらいいのかなんてことを、私はシュミレーションしながら子供のいる生活を想像している。しかしなぜ私は子供がいる生活を想像したいのだろうか?『老後が寂しいから?そんなことのために子供を持とうなんて、それがどんなに子供や自分を苦しめるかなんて“渡る世間は鬼ばかり”を全シリーズを観てたなら知ってるじゃない』『今の生活に新たな刺激がほしいから?自分の刺激のために子供を作るなんてなんて自分勝手なの?!』『母性本能から?私にそこまで母性なんてあるの?』

テレビや雑誌、そして友人の話しの中でしか知らない“子供がいる世界”。その世界をシュミレーションするだけですでに難解な問題を抱え、自信などまったく持てない私が“子供を持つ”という生活を迎えるなんて、そんな日がいつか来るのだろうか?40代後半になりほぼその可能性がないだろうなぁ〜と思いつつも、想像は止まらない。

人の好奇な視線と闘い、胸を張り、道を歩くことに一生懸命だったあの頃に、そんな生活を想像できる今の時代を想像することはできなかった。LGBTが生きやすい世界になるには、まだまだ変化するべきことは山済みだが、時代は動いているようだ。
妄想はそう私に教えてくれた。

可能性が広がれば解決しなくてはならないことが増える。でもその都度、ぶつかる壁を前に呆然と佇む人が、私一人でなく、言葉を交わせる自由に守られながら、誰かと共に向き合える。そんな時代が来ればLGBTはきっといろんなことを乗り越えられるはずだ。

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アンティル

アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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