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「メダカの日々」

茶屋ひろし2018.10.12

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去年の年末だったか今年に入ってからだったか、記憶が定かではありませんが、近所に金魚屋ができました。
自転車通勤の際に店の前を通りかかるたび、軒先で売られているメダカが気になっていました。生き物は飼わないな~、と思っていましたが、鉢植えを集めだして2年たち、メダカくらいならいいかも、と思い始め、2か月くらいでその機運も高まったので、春の終わりの休日に、自転車で買いに行きました。

「メダカください」と店のお兄ちゃんに声をかけ、「どれにしますか」と言われて見渡せば、大きくて丸いプラスチックの容器ごとに、いろいろな種類のメダカが売られています。
「一番安いのでいいんよ」と1匹150円のメダカを10匹と、3リットルの水が入る黒い陶器の器、水草、餌、網、カルキ抜きなどをまとめて購入しました。赤玉土を少量とタニシ1匹をサービスしてもらって、自転車の前かごに入れて家に帰りました。

植木と鉢と土を買って帰ってベランダで作業するのと同じ感覚で、水と水草を入れてメダカをその中に放します。
外で飼うか家の中で飼うか、少し迷いましたが、外で飼ったほうがメダカによさそうな気がしてベランダの鉢植えの隙間に器を置きました。
しばらくその動きを上から眺めたあとシャワーを浴びたら、頭を洗う時に目を閉じると網膜にひらひらとその動きが焼き付いていました。

その後、2週間くらいで3匹死にました。朝起きてベランダに出ると、ぷかーと浮いているので驚きます。昨日まであんなに元気だったのにメダカの死は突然です。すくって近くの植木に埋めます。
1匹ずつ死んでいくので、何が原因か調べたら、水の量に対してメダカの数が多すぎたらしいとわかりました。
1リットルにつき1匹が妥当、とネットに書かれています。
3リットルに10匹はたしかに多すぎます。死因は酸欠だろうと思いました。

早速、昼通勤のときに、今度は店先に並んでいた6リットルのプラスチックの容器を購入しました。職場に持って行くことになってしまって、聞かれてもないのに「メダカ飼い始めましてん、そしたら3匹死にましてな」とべらべら喋りました。

その後、夏に向かってどんどん気温が上昇していき、広くなった水槽でメダカたちは次々と卵をお尻につけていくようになりました。水替えのときに適当に水草を替えていたら、水草用にしていた植木鉢のトレイの中で、赤ちゃんが生まれていました。2ミリくらいでほとんど透明です。あらあら、と思っているうちにどんどん生まれて、6リットルの容器をもうひとつ買いに行って、8月の終わりには50匹以上生まれてしまいました。
最初に生まれたメダカたちはすでに1センチを超えていて、もう卵をつけています。
なんという繁殖率の高さ。このままみんな無事に大きくなったら器がいくらあっても足りません。ご近所にお裾分けに回らないといけないレベルです。
夏の終わりに容器は最初の陶器を入れて4つになりました。植木天国だったベランダはすっかりメダカ王国と化しています。

餌も、ベイビー、ネクスト、コンプリートと名のついた、粒の大きさがそれぞれ違うものを与えています。
外敵がいなくて餌も豊富、陽当たりもよい・・増えない理由がありません。
この先冬になると、冬眠するらしいのですが、それまでに大きくなれなかった稚魚たちは死んでしまいそうです。それで淘汰されるのかしら。
ちなみに、タニシは20匹くらいになりました。分裂したのかよくわかりません。ぷかぷか浮いてメダカの餌を一緒に食べています。

それらを見ているのは楽しくて、おかげで休日には、メダカ、ネット、メダカ、テレビ、ネット、メダカ、漫画、洗濯、メダカ、みたいに、メダカ鑑賞が随所に挟まれるようになりました。
特に稚魚がたくさんいる容器を眺めていると、星のたくさんある宇宙空間のようで飽きません。

先だって、「LGBTは生産性がない」という国会議員の発言が物議を醸しましたが、人に対してそう呼ぶことにはなんだか抵抗があります。米や小麦じゃあるまいし。
彼女は続けて、「そこに税金を投入するのはいかがなものか」というようなこと書いたのでした。それは、子供をつくらない人間には支援は必要ない、とも読めて、優生思想にもつながると非難を浴びたわけですが、私には、税金がどうのより、前後の文章から、子供をつくらないのなら差別されても仕方がない、というふうにしか読めませんでした。

ネットの反応を見ていて驚いたのは、彼女の発言に対して、一理ある、とか言っているゲイの人が少なからずいることでした。
それって、メダカを飼っているつもりが、いつのまにか飼われているメダカになってしまうようなことなんじゃない? と、強引ですが・・。

子供をつくろうがつくれまいが、セクシュアリティがどうであれ、そんなことは人に(ましてや国に)お伺いを立てるようなことじゃないし、こちとら、誰がどんな状態であろうと差別されずに生きていけるようにしとけ、と国に金を払っているわけで、立場をはき違えている政治家に同調してどうすんの・・ と、その自己申告が気になりました。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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