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女性アスリートの自己表現〜真っ赤なリップは試合の邪魔になりますか?〜

行田トモ2019.07.24

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暑中お見舞い申し上げます、といっても涼し…?という日々が続いていましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。行田はぼちぼち元気です。

そして、推しができました。

えぇ、アイドルとか俳優とか、その「推し」です。しかもガチ恋レベルの。

いきなり何のこっちゃと戸惑っていらっしゃるでしょう。私もです。久々の衝撃にワタワタしております。だって新しい推しができるなら、兼ねてよりチームとして贔屓していたアメリカ勢だと思ってたんですよ。でもダークホースでした!ヨーロッパ勢かーーー!!!
さてさて、もうお気づきの方もいらっしゃるでしょう。6月、ヨーロッパ勢、ダークホースといえば……そう、女子サッカーW杯オランダチームです!!!!!

6月末のロンドン旅行からバタバタと帰国し、その後も何かと忙しくしていたので、「わ、W杯やってる!!」と気づいた時には既にイングランド対アメリカの準決勝。時差ボケを引きずっていたので、そこからリアルタイム観戦の昼夜逆転生活が始まりました。

先ほどアメリカ贔屓と書きましたが、それは女子サッカーを好きになったきっかけが、Wambach選手だったからです。澤選手の良きライバルとして日本でも有名ですよね。もうガチガチのガチ恋でした。もはやただの恋でした。大学時代に彼女に惚れ込んだのがきっかけで、女子サッカーを見るようになり、初めて「オフサイド」が何かを知った私。

Wambach様は代表を退かれましたが、それでも私が女子サッカーを見るのが好きな理由があります。

それは、選手それぞれのスタイルです。

プレースタイルではなく、「姿」と訳すスタイル。バッチリメイクだったり、日焼け止めくらいかな?と思ったらとても繊細なネイル(危なくないように短くて、それもまたかわいい)だったり。各選手がアップになると、ついそこをチェックしてしまうのです。

アメリカチームを贔屓にしていた理由が、おしゃれさんが多いイメージだったからです。

Morgan選手は瞬きの度に「ラッシュニスタ!!」という感じで可愛いですし、私のアメリカチーム内での最推しであるPress選手はナチュラル系ビューティー。

 

 
 
 
 
 
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ヘアスタイル部門は、「ママはRapinoe派だもーん」と母が推し続けている、Megan Rapinoe選手。

オープンリーレズビアンである彼女は、トレードマークのがっつりブリーチ金髪をパープルにして今大会に登場しました。「あの色もすごく似合ってて好き〜❤︎」と母、メロメロ。

 

 
 
 
 
 
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そして、アメリカが決勝進出を決めた翌日、運命の瞬間が訪れました。スウェーデン対オランダ戦の後半、ひとりの選手が投入されます。薄ピンクに染まったハイパーショートヘアにくっきりアイライン、肌の色をより一層美しく見せる濃いめのリップ……。

 

 
 
 
 
 
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涙する熊谷選手を必死に慰めるシーンが日本のメディアでも取り上げられた、オランダ代表Shanice van de Sanden選手です。

その圧倒的な攻撃力と美にすっかり心を奪われました。早速リサーチを開始すると、何と彼女は「リップメイクをしないで試合に出ることはしません。リップは私を最も心地よくしてくれるものだから」と言っているというではありませんか…!


そのコメントが掲載されたのは、New York Timesの記事。

https://www.nytimes.com/2019/06/20/style/world-cup-women-hair-gender.html

タイトルは
”World Cup Players Say Muscles and Makeup Mix Just Fine, Thanks”

『W杯選手が言うことには、”筋肉とメイクは相性バッチリですよ、どうもお世話さま”』といったところでしょうか。

記事を読んでみると、推しの愛用コスメだけでなく、女性アスリートを長年苦しめている問題が明らかになりました。それは、彼女たちのスタイルに対する周囲の厳しい目やバッシング、そして、女子選手のセルフパッケージングの難しさです。

バッシングの例として取り上げられたのは、ナイジェリアのFrancisca Ordega選手。3回のW杯出場経験を持ち、大会ごとに髪型を変えてきた彼女は、今回はカラフルなドレッドヘアを選びました。

 

 
 
 
 
 
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しかし、開幕戦でノルウェーに3−0で敗退した後、Ordega選手がtwitterを開くと、メイクやネイル、そして彼女が特別な意気込みを込めたヘアスタイルが敗戦の原因であるかのようなバッシングの嵐を目にすることになったのです。

私は頭を抱えました。そして思わず「部活?」と呟いてしまいました。
同じような気持ちになったことが、何年も前にあったのです。

高校時代、私は女子バドミントン部のマネージャーをしていました。応援団への返事は全力の「押忍!」という古風な学校でしたが、後々「え、女子部にもマネージャーいたの?」と驚かれることが多く、そこに男女差をつけない母校でよかったと今では思います。

大会時、ショートカットの選手しかいない学校がいくつかありました。もちろん、女性のショートカットは素敵ですが、彼女たちは全員が全く同じ、似合わせようとしていない髪型、つまり個人の意思が反映されていない髪型だとすぐにわかりました。何とも悲しい気持ちになったことを今でも覚えています。

つまり、「競技に本気なら見た目なんかにかまけるな」というのです。そんな部活動生に対する理不尽な考えを、一流アスリートにも向ける人が数多くいて、負けるなり「それ見たことか」とバッシングをしたということです。

高校生の行田にショックを与えた思想が今現在も残っていて、そして世界共通とは…。以前のコラムで「世界はひとつ」と書きましたが、こんな形でひとつになるのは嫌です!断固拒否!!

バッシングはしないまでも、W杯を見た人々の中にはスポーツ熱と女性らしさの共存に戸惑う人がいると記事には書かれていました。van de Sanden選手のように、メイクをすることによって安心し、自信を持って試合に臨める選手がいて、現在では多くの化粧品メーカーが汗に強い商品を開発し、広告に女性アスリートを起用しているにもかかわらず。

こうしたメイクやヘアスタイルへの各選手のこだわりは、女性らしさを見せるためだけではないという考えも記事には登場します。それは、個人のブランドを際立たせ、プロモートをする行為でもあり、W杯などの大きな大会はその絶好のチャンスだということです。

「女性アスリートが自分らしい姿のままで活躍できることは、多くの女性にとって心強いエンパワメントになると思います」と、ボウリンググリーン州立大学で、スポーツ心理学者としてジェンダーやセクシュアリティに焦点を当てた研究をしているヴィッキー・クレーン氏はコメントしています。

長年、女子選手が自身や競技をプロモートするための唯一の方法は、「超異性愛者」であること、つまり、ヌードカレンダーなどで異性の視線を集めることだったとクレーン氏は考察しているからです。こうした流れを変えるべく、現在は選手が望む形での表現を行おうとしていますが、それでも、クレーン氏は女性アスリートの自己表現の選択肢は非常に限られていると語っています。

ステレオタイプの女性らしさから外れて、メイクをやめたり、髪を短くすると、ボーイッシュだとか、男性的だとラベリングされ(記事内では、筋肉質な体格が男性的だと思われることに傷つく女子選手も多くいると述べられています)、その一方で、メイクをしたり、カラフルなポニーテールにすると嘲笑されると。

この記事を読んで、私は長田杏奈さんの『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン、2019)を思い出しました。長田さんはエイジングやモテを語る際によく出てくる「女を捨てている」という発想に疑問を抱きます。そもそも「女」とは捨てられるものなのか、そして、その「女」の定義が異性の目を意識するということなのであれば、それは狭められすぎではないのかと。

私は、女性アスリートたちはこの狭い「女」をさらに狭めたところに閉じ込められてきたのではないかと思うのです。

New York Timesの記事では、女子選手はパワフルでありながら、(男性を脅かすほど)強すぎることはなく、ある程度の女らしさを保ちつつも、(自由にメイクをするほど)女らしすぎてはいけないと縛られてきたという見解がなされています。

古く、偏った価値観に基づく「女」らしさ。時代が変わってもアップデートされず、アスリートの活き活きとした輝きとの共存が許されない「女」らしさ。

そんな「女」なら、私は喜んで捨てます。そもそも、誰もそんな「女」の枠内に収まった覚えはないでしょう。

何かとケチをつけたがる人たちに「あなたに『女』認定されなくても結構!」と私は言えます。しかし、今回のW杯に出場した選手たちは、そうもいきません。自己表現を巡るやり取りは、単に自身の心地よさだけの問題ではないからです。自由な自己表現を勝ち取れるか否かは、未来の女子スポーツ界の在り方をも左右するでしょう。

積み重ねた努力によるプレーで競技を盛り上げ、そして、未来の選手たちのために、人々をエンパワメントすることができる存在であることを女性アスリートたちは求められているのです。

そんな彼女たちに、自信を持つための自由なメイクやヘアスタイルすら許すことができない現状。

ここまで書いて、私は再び頭を抱えてしまいました。

自分に腹が立ってきてしまったのです。「私は何をやっているの?」と。

選手たちのSNSに「いいね!」を押し、時には賛同や励ましのコメントを送ります。それも確かなサポートです。サポートの大切な第一歩です。

でも、そこから先は?

TVやスマホの画面の向こう側の人々ではなく、生身の人間同士として彼女たちのためにできることは何なのだろう?

恥ずかしながら、今の私の頭の中は、答えの出ない「?」マークでいっぱいです。確実に言えることは、決して他人事で終わらせたくないということ。

今大会に参加した選手も多数参加する2020東京オリンピック。大きな大きなイベントを一年後に控えて、これまた大きな宿題を与えられた、そんな女子サッカーW杯でした。

 

追記
Shanice van de Sanden選手のコスメについて
お気に入りはメイベリンのcherry chicだとか。日本では買えない色でした。型番まで突き止めたのに!

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行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
立教大学 文学部 文学科 文芸・思想専修卒
在学中に一年間ロンドンに留学。
ストックフォト会社、美術館、出版社事務を経て、現在はうつ病との共生を目指して半療養中。自身の病気と、セクハラ被害を受けたことをきっかけに、女性のwellbeingを模索中。同時にジェンダー、セクシュアリティ、クィア、フェミニズムについて考える日々。
趣味は読書、観劇、『ル・ポールのドラァグ・レース』『Queer Eye』を見ること、海外セレブウォッチ、
ハムスターの世話(でも噛まれて泣いた)
最近のブームは韓国ドラマ&文学、アルゼンチンタンゴ。
笑顔で沼に沈没中。

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