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TALK ABOUT THE WORLD ドイツ編 「お下がりのリレー」

中沢あき2019.08.17

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生まれてくる子どもを迎える準備はどこの家庭でも大仕事だと思うが、その点、我が家はとても恵まれていた。
子どもが生まれる、ということを知らせると、親戚や友人たちが子ども服やベビーカー、その他ベビーグッズのお古をゆずるよと喜んで申し出てくれて、本当にありがたかった。

特にベビー服は、夫の従兄弟夫婦の息子が着たものと、彼の義弟の娘たちが着た服をひと揃え、こちらにゆずってくれるという。従兄弟夫婦の6歳になる息子が着た後に、4歳と1歳半の女の子たちが着回した服に加えて彼らの友人家族から譲られた服などがあるそうで、従兄弟のお嫁さんのHいわく、赤ちゃんの服なんてすぐにサイズアウトするからちょっとしか着ないし、買わなくてもお古で充分よ、と。私自身の友人たちがやはりベビー服をゆずってくれると言っていたので、それに加えて少し自分で買えばいいかと思っていたところへのこの申し出、もちろんありがたく受け取った。

そして臨月に入ったある日のこと。突然我が家に大きな引っ越し用の段ボール箱が4つ届いた。どすーん、どすーん、と音をたてて玄関に積み上げられていく箱をあっけに取られながら見たら、送り主欄にはHの義妹のCの名前。例のあれだ! 困惑しつつも箱を開けていったら、そこにはサイズ分けされたベビー服がギッシリと詰まっていた。何枚ものボディなどの下着類にカバーオール、半袖長袖シャツにズポンにワンピースまで。その他におくるみやよだれ拭きや寝袋や靴、季節ごとのジャケット類や帽子に哺乳瓶まで!

これ、店が開けるなってくらいのものすごい量だ。しかし我が家、あと数週間で子どもが出てくるというのに、まだ1年半前の引っ越しの荷物やリノベの道具が片づいておらず、そこにまた荷物が増えたもんだから、ありがたい一方で疲れがどっと押し寄せてきた。これ、これから仕分けするのか……。

とりあえず生まれてからすぐに必要になりそうなサイズの服やおくるみ、布類をその中から取り出してひととおり洗濯し、引き出しに入れておいた。そしていざ生まれてきてみれば、うちの娘は小柄だったので、一番小さいサイズですら服がぶかぶかだったし、これまたすぐに大きくならない子だったので、この一番小さいサイズを数カ月ずっと着続けているのをみて、うーん、これはせっかくもらった服でも今度は季節に合わないものが出てくるなとちょっと心配になった。服をゆずってくれた家の子どもにも冬生まれがいたので、ちょうど季節もサイズも合うだろうと思っていたのが、うちの子どもはのんびり成長ペース。

そんなある日、さらに3つの段ボール箱が再び予告なしに届いた。今度のパッケージにはさらに大きなサイズの服や靴、そして赤ちゃん用のおもちゃがギッシリと! こんなにおもちゃを与えられたら、赤ん坊もわけわからなくなるがな……。3つ4つのおもちゃをその中から選び出し、服はこの先半年以上は着ることはないだろうと思って再び蓋を閉じ、これらの段ボールはいったん地下の物置き行きである。とはいえ、もちろんありがたいことに変わりはなく、お礼を兼ねてCにメールをしたら、それはよかった、あともう2つ箱があるから、ですと!

あわてて、うちの子の成長ペースがゆっくりなこと、なので当面の服は充分にあるし、と、やんわり伝えたら、こちらの荷物事情をわかってくれたようで、じゃあもうしばらく後で送るわね、と返ってきてほっとした。たぶんこの大量の服を整頓する大変さは彼女も経験済みなんだろう。「安心して。次の箱で終わりよ。うちの娘たちもこの頃は、従兄弟のお下がりじゃなくて自分の服が欲しいって言い出したから。女の子は大変だわ!」

小柄だったうちの娘も4カ月を過ぎた頃からぐんぐん大きくなり、気がついたら成長曲線の平均に入るようになっていて、無事、ゆずってもらった服も着こなせるようになった。そうなると今度は、たくさんある服からいろいろと選んでやるのも楽しい。私たち親の好みではないスポンジボブとかディズニーのキャラクターがついた服や明らかに男の子向けだなという、ダンプカーなどがプリントされた服は抜き出してすでに地下室行き。あとは男の子向けのものでも色が似合いそうなら娘に着せてやる。

そこに加えて私の友人たちが「もうたくさん持ってるのは知ってるけど、よかったら着せてあげて」とかわいらしいお下がりの服をくれたので、赤ちゃんのときから娘は衣装持ちである。こんなにたくさんお洋服もってて、アンタは幸せ者ねえ、と話しかけて選んだ服を見せてやると、わかってるんだかわかってないんだか、にっこりとうれしそうである。

ちなみに夫の姉からもお古の服を送りたい申し出はあったのだが、なんと夫や義姉の代から着た50年前のベビー服に義姉の子どもたちの20年前、10年前の服をぜひ着せてあげたいの、という伝統をつむぎたい思いは理解してあげたかったが、さらに将来の孫にも着せたいからていねいに手洗いしてね、洗濯の水は熱くても冷たくてもダメよ、というおまけの言葉にびびって、こちらは丁重にお断りした。

ミルクの吐き戻しやおもらしで日々汚れるのに、毎回手洗いなんてやってられるか、である。ま、これはレアケースであって、あとの皆は、着倒して捨ててもよし、他の家庭にゆずってもよし、好きにして! という気楽さで助かった。めまぐるしい育児への共感が心にしみる。アリガトウ。

そんな我が家のベビー服事情だが、いずれは親の自分たちが買ってやらねばなくなってくる。というのも3歳以降くらいからお下がりというものは徐々に少なくなってくるらしい。おそらく子どもが自分で動けるようになると、服の傷みも激しくなってもたないからじゃないかと、同じくお古を周りからもらってるという新米ママの友人は言っていた。なるほどね。

まあその際は、プチプラの服もいいが、古着屋さんを見てみるのもいいかなと思っている。ドイツ人は物をなかなか捨てない、フリーマーケットが盛んで、物置きには古い物がぎっしり、という話を以前書いたが、子ども服にしてもしかり。友人知人からのお下がりはもちろん、子ども服やおもちゃのフリマもしょっちゅうあるし、町中には子ども服専門の古着屋も何軒もあって、これが結構充実しているからだ。

もっとも捨てられない理由は、自分の子どもが着たという思入れが多かれ少なかれ、やはり皆あるらしく、できたら捨てるよりは知っている子どもに着てもらえたらうれしい、と思うようだ。プチプラの服もいいけど、子ども服はすぐにサイズアウトすることを考えたら経済的、かつリサイクルは環境にもやさしいしね、と思いつつも、とあるアウトレットショッピングサイトで有名な子ども服ブランドの服が出てきて、あら、こんな安く買えるのね、かわいい?と思わずポチりそうになったが、部屋の隅に積んである段ボールを見てはっと我にかえった。いかんいかん。

 

© Aki Nakazawa
こんな感じの段ボールがあと4つあり、さらにこれから送られてくるというすさまじさ……。ちなみにこのベビー服パッケージ、次はHの弟の同僚夫婦に子どもが生まれたら送られるという予約が入っているのです。なので、なるべくシミを残さないようにきちんと(洗濯機での)洗濯を心がけております。

これだけ服があると、親の好みで服をスタイリングさせてあげられるのも楽しいところ。とはいえ、この大量のお下がりのリレーは、地下室などの物置きが常設されているドイツの家だからこそ可能であって、日本ではちょっと難しいかも。でもベビー服のリサイクル、なかなかよいですよ。

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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