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ボディ・ポジティブは他人事?〜自分”だけ”は許せなくて〜

行田トモ2021.08.11

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皆さまこんにちは。行田トモです。暑いですね……夏、もうがんばらないで……いいんだよ……

最近SNSを大断捨離したのですが、Instagramのアカウントを削除する直前に、ラブピでもおなじみ、長田杏奈さんのボディ・ポジティブに関する投稿が目にはいりました。その中の一冊、『太れば世界が終わると思った』(キム・アンジェラ著/高橋美絵子・西野明奈訳,扶桑社)を見るなりすぐに購入。

 
 
 
 
 
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なぜなら、その時わたしの世界は終わっていたからです。わたしが太ったから。
いち人間として、女性として、フェミニストとして、わたしはボディ・ポジティブ賛成派でした。どんな体形であろうと(おおいに健康を害する場合は改善を願いますが)、人にはそれぞれの美しさがあって、その基準は数値で測れるものではないと。

ところがうつ病と併発した過食性障害※ (嘔吐を伴わない過食症。摂食障害の一種)で153センチのわたしが38キロから65キロまで太りました。
生まれて初めての試着室での焦りと挫折、ネット通販でサイズ詳細を見ては諦めのため息をつく日々。

苦しんでいました。それでも食べずにはいられなかったのです。台所の隅にしゃがみ込んで泣きながらチョコレートを食べ、バターを食べ、ココアを粉のままなめました。家に何もなくなると半狂乱になりながら宅配サービスを利用しました。「おいしい」と思ったことも、食べ物に感謝したこともありませんでした。ただただ、食べなければという焦燥感に追い立てられ、心がボロボロになると同時に、体がどんどん膨れていったのです。

こんな状態で親元に戻ったわたしは、自分の体を直視するのも嫌になっていました。朝、昼は食べますが、夕方以降は部屋に引きこもり、ダイエットドリンクを飲みました。運動も始めました。それでも減らない体重と変わらない体形に焦り、落ち込みはひどくなる一方でした。

「あの人はわたしより細い。あの人も、あの人も。わたしの二の腕はあの人よりもっと細かったのに。折れちゃいそうと言われていたのに」外に出ては道行く人と自分を比べ、自己嫌悪に陥りました。どこかに消えてしまいたい気持ちでいっぱいでした。

わたしはこの状態をカン・ミレ症候群と名づけました。韓国ドラマ『私のIDはカンナム美人』で、容姿を理由にひどいいじめを受けていた主人公・ミレが大学入学前に整形手術を受けるのですが、「THE整形顔」になってしまいます。

そのせいでさまざまなトラブルに巻き込まれながらも、内面が変わらなければ何も変わらない、そして自分が好いてもらえるのに外見は関係ないと気づきます。このドラマの序盤では、ミレは友人を含め、女性の顔に点数をつける癖があったのです(いかに女性が見た目で判断され、「もの」扱いされているかにフォーカスしたエピソードもあるので、ぜひご覧ください。名作です)

そんなカン・ミレ症候群だったわたしが長田さんの投稿を通じてキム・アンジェラ氏の本に出会いました。タイトルを見て思いました。「あ、わたしのことだ」と。なぜなら恐ろしいまでの食欲で、体はかわいそうなほどなの太っているのだから。世界なんて終わっているのだから。

17年間にも及んで摂食障害と闘ったキム氏の性格は、わたしの性格とも、※注1の摂食障害の本に載っている、摂食障害になりやすい性格の典型的な特徴とも一致していました。「周囲の期待にきっちり応えようとするいい子」、いわゆる優等生タイプです。それはつまり、だれかに認めてもらいたいと常に必死でいるということでした。

「〜すべき」「〜であるべき」「〜でなければならない」「〜しなければならない」わたしの思考回路をすぐに支配してしまう言葉たちです。そして、わたしはうすうす気づきはじめていました。これはだれかから押し付けられたものでもなく(学生時代・会社勤めの間は別ですが)、いつの間にか自分に対する基準値を高く設定する癖がついてしまっているだけなのだと。そこを取っ払ってしまえば、世の中はもっとシンプルで生きやすい場所になるのだと。

キム・アンジェラ氏の著書はこの自縄自縛を確信に変えてくれました。彼女はこう語っています。

”生きてみたら、わたしが自分のことを嫌っていたのは、実は自分のことを大好きだったせいだった。まさに自意識過剰だった。自分にひどく執着していた。ただ自分をもう少し放っておけばよかったのに。統制しようとも、むやみに努力しようとも思わず、完璧になる必要もなく。(P.173)”

キム氏は自分に戦力外通告を告げてあげるのです。もうだれからの期待にも答えなくてもいいのだと。必死に愛を求めなくてよいのだと。
そうして長い年月を共にしてきた摂食障害に別れを告げるのです。
本を読み終えたとき、体が少し軽くなった気がしました。そして母に伝えました。「明日から皆と同じものを食べたい」と。

それから、少しずつですがわたしの意識改革は続いています。外出するときは、人と自分を比べるのではなく、すてきな着こなしをしている人を探します。実は親元に戻ると同時に大量の洋服を通販で購入したのですが、全て「体形を隠せるか否か」で選んでいて、着ていてちっとも楽しくなかったのです。
今でもタンクトップで出かけてしまった日に「あぁ……腕が太い」と嘆いたり、妊婦さんに間違えられてしょんぼりすることもあります。一進一退です。それでも2年ちょっとかけて太った体を完全に戻そうとは思わなくなりました。過食が少し治った、まずはそれだけで自分に大拍手です。全く運動をしなかったわたしが朝のウオーキングを続けられています。すごいです。
「あなたは自分の体に対してポジティブですか?」と問われたらはっきり”YES!”とはまだ答えられません。もうすこーし、着られる洋服の幅を広げたいですし、筋肉もつけたいので。苦手な水泳にもチャレンジしてみたいのです。

それでももう、自分の体形がどうであろうと世界が終わるとは思わないでしょう。今年の初めからさまざまなことを経験して、だいぶ強くなりましたから。こうして日々もがきながら生きている。そんなあなたも、わたしも、とびきり美しいのです。

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行田トモ

行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
福岡県在住。立教大学文学部文学科文芸・思想専修卒。読んで書いて翻訳するフェミニスト。自身のセクシュアリティと、セクハラにあった経験からジェンダーやファミニズムについて考える日々が始まり今に至る。強めのガールズK-POPと韓国文学、北欧ミステリを愛でつつ、うつ病と共生中。30代でやりたいことは語学と水泳。

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