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ラブピ読者の皆さま、こんにちは。行田です。早いですね、もう12月だなんて。2021年は皆さまにとって、どんな一年でしたか? わたしにとっては「激動」の年でした。体重が過去最高値を記録し、最愛のパートナーと別れ、東京ともさよならをし、仕事を始めては辞め……。

たくさん悩んで、泣きました。周りの人を悲しませました。それでも、愛をもらいました。

そんな一年を経て、ようやく「このわたしで生きていくしかないんだ」と、ある種の開き直りのような境地に達しました。これまで誰もわたしの在り方を否定しなかったのに、当のわたし自身が自分を許せていなかったのです。「これではいけない」「こんなはずではなかった」と、日々自分を責め続けていました。どこにいても、「こんな自分は本当の自分ではない」と否定し続けました。

でもそれって、あまりに自分が可哀想では? 他でもないわたし自身が、わたしを受け入れてあげなくてどうするの?
そんなことに気づかせてくれたのは、ある一冊の絵本でした。

レオ=レオニ『じぶんだけの いろ いろいろ さがした カメレオンの はなし』(谷川俊太郎訳/好学社/1975)です。
書店で母がこの絵本をめくって涙ぐんでいたので、横からのぞいて、そのままレジに直行しました。


主人公はある悩みを持ったカメレオン。おうむやきんぎょ、生き物は皆それぞれの色を持っているのに、自分だけは決まった色を持てず、行く先々で色が変わってしまうことを嘆いているのです。
彼はある日、年上のカメレオンに出会い、悩みを打ち明けます。

「ぼくらは どうしても じぶんの いろを もてないんだろうか」

と。すると年上のカメレオンは答えました。

「ざんねんながらね」
「でも, ぼくら いっしょ に いて みないか? いく さきざきで やっぱり いろは かわるだろう, だけど きみと ぼくは いつも おんなじ。」

そうして2匹は一緒に暮らし始めます。ある時は赤に、緑に、またある時は水玉模様に。めでたしめでたしで物語は幕を閉じます。

この本を読んで、わたしは許されたような気がしました。変わってしまった自分を受け入れられず、現実を受け止めきれずに苦しんでいましたが、「それでいいんだよ」と言ってもらえたように感じたのです。不思議でした。それまでの自分だったら、「いいなぁ、一緒にいてくれる人がいて」と嘆いたでしょう。ところが、この本はわたしを孤独にすることはなかったのです。そして、「変わっていくことを止められないのなら、ありのままの色の自分を愛してあげようよ」と慰めてくれたのです。

行田トモは、五年間を共にしたパートナーとさよならをしました。それはそれはつらい経験でした。その別れは、東京で住む場所を失うことも意味しました。神戸の親元でしばらく過ごす間に、自分を許せずに、両親を悲しませました。友人を悲しませました。親友を失いました。そして福岡にやってきました。甥に出会うことができました。うつ病であるだけでなく、社会不安性障害とADHDだと医師に告げられました。仕事をしようとチャレンジしてみたけれど、失敗しました。たくさん寝なければならなくて、起きられない日が続きました。この先が不安です。どうやって生きていこうか、と眠る前に怖くなります。泣きたくなります。たくさん泣いています。

それでも、わたしはこの体で生きています。生きていきます。『YELLOW YELLOW HAPPY』の歌詞のように、「この体とこの色で」生き抜いていくのです。そして、その色は一色でなくともいいのです。

心のうちを正直に話すなら、変わりたくはなかったです。もう戻れない日々を振り返って思います。あのまま、彼女と手を取り合って、2人で生きていきたかったです。2人の家に帰りたいです。

しかし、わたしは、そもそも「2人が違う色をした他人同士」だったこと、それでも、一緒にいようとしたことを忘れていました。わたしたちは、皆それぞれ違う色で生まれます。誰ひとりとして同じ色ではありません。絵本の主人公のカメレオンのように、同じ色になってくれるパートナーと出会うことも不可能です。だからこそ、色の違いを超えて共にいようとすることは、尊いことなのです。わたしはそのことを忘れて、同じ色でなければならないと無理を言ったのです。

そして、月日が流れました。わたしはもうあの頃のわたしの色ではありません。倒れて、なんとかまた立ち上がろうとしています。おそらく何度も色が変わったでしょう。それは彼女も同じでしょう。

変わることは怖いことです。自ら変わることはもっと怖いことです。勇気が必要です。それなら、変わった自分を認めてあげて、その色を受け入れて、愛してあげなければ。せっかく変わったのですから。

ご紹介した絵本の訳者である谷川俊太郎さんは、レオ=レオニさんの絵本の主人公たちは「自分たちの弱さを恥じもしないかわりに、自分たちの強さを誇りもしません」と語っています。それは、とても自然で美しい生き方ではないでしょうか。

人は往々にして、本当の自分の色、その一色を求めてしまいがちです。しかし、そんな決まりきった色はそもそも存在しないのではないでしょうか。その時置かれている状況、環境、思想信条、周りにいる人々からの反射etc…さまざまな要因で、わたしたちの色は絶えず変化し続けているのではないでしょうか。

先述したように、わたしは変わろうとする中で、たくさんの人を傷つけました。それでも、距離は遠くても、わたしのそばにいてくれる人たちがいます。かけがえのない、愛しい人たちです。そして、わたしは思うのです。彼らの愛に照らされているわたしは、もしかしたら虹色のように輝いているのではないかと。それがわたしのTrue colourなのではないかと。だからわたしも、わたしを愛します。絶えず変化し続ける美しいグラデーションを愛して、これからも生きていきます。

またお目にかかれたらうれしいです。行田トモでした。

 

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行田トモ

行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
福岡県在住。立教大学文学部文学科文芸・思想専修卒。読んで書いて翻訳するフェミニスト。自身のセクシュアリティと、セクハラにあった経験からジェンダーやファミニズムについて考える日々が始まり今に至る。強めのガールズK-POPと韓国文学、北欧ミステリを愛でつつ、うつ病と共生中。30代でやりたいことは語学と水泳。

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