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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 奇妙な冬休み

中沢あき2022.01.21

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遅ればせながら寒中お見舞い申し上げます。
年末のご挨拶とともに昨年の連載を締めくくろうと思ったのに、12月の原稿を飛ばしてしまいました。

ドイツはクリスマスから年明けまでの1〜2週間が冬休み。なのでクリスマス前には皆仕事を片付けようと焦るのだけど、皆が焦るものだから、急に飛び込んでくる仕事もあり、まさに師走の状態。冬休みの1週間はちゃんと子どもと向きやってやりたいなと思ったので、頑張ってあれやこれやとやっていた12月の半ば頃、子どもが熱を出したと保育園から呼び出しを受けた。

夫が連れて帰ってくると、本人は元気であるものの38度半ばとしっかりとした熱。実は前日の夜、風呂上がりにいきなり盛大に吐き戻し、そのまま夕飯を食べずに寝てしまったのだが、朝はすっかり元気になっていたので、遊びに出かけた先でご馳走になったバタークッキーの食べ過ぎが原因と思っていたのだが、どうやらそれだけではなさそうだ。夜中には熱が上がったのか寝ながらふうふう言っていたが、翌朝には熱もすっかり下がり、発熱の後の丸1日は登園禁止というルールなので家で待機。そしてそのまた翌日、元気に保育園に出かけていった。やれやれ、さあまた仕事をフルで再稼働と思って数時間後、再び保育園から呼び出し。「手に発疹が出てますよ。手足口病なのに連れてくるなんて!」と保育士に叱られた夫がその足で小児科医へ。前週に行った定期健診の時にもこの発疹が少しあったのだが、その時は医者も「なんともない」と言ってたのに今回は「発疹が増えてるので、手足口病ですね」ということでその週は全休決定。ううう……、週末までの締め切りが間に合うだろうか。

医者から帰ってきた子ども自身は元気そのもので熱もないので、一緒にお仕事しようと誘い、子どもにも買い物ごっこだの、お母さんごっこだの、お料理ごっこだのの仕事に勤しんでもらったが、1時間半が限度。まあしょうがないよね……。

そしてまた翌朝。私と子どもが朝食を取る間も夫が起きてこない。そのうちにトイレに駆け込んではベットに戻る、を繰り返し始めた。あらら、胃腸炎…。これは子どものを貰い受けたか? 昼過ぎまでその往復を繰り返した夫は午後になってベッドから出てきたが、かなりの衰弱状態。夕方からの仕事の予定があったのだが、別の人に代わってもらったらと勧めるも、交代要員がいないとのことで、まずは出勤のためのコロナ検査にフラフラと出かけていった。結果は陰性。でも感染症ってコロナだけじゃないからね、気をつけて、とヨレヨレの夫を送り出してから子どもと夕ご飯をと思ったその直前。なんか急に背中と手首のあたりがゾクゾクしてきた。なにこれ? 暖房を入れ忘れたかなと思うも、いやしっかり効いているし、子どもは寒くないと言う。その後子どもを寝かしつけるまでの2時間の間に、ものすごい悪寒とひどい喉の痛みが始まって恐ろしくなった。熱を測るとすでに38度半ばまである。これはもしやと「手足口病 大人」とググると、まさにその通りの症状。そして夫の嘔吐の症状もそうだという。大人が罹るとひどいって聞いてたなとゾーっとして、慌てて漢方薬を飲み、締め切りが迫っている案件の一つを仕上げて送ってからベッドに入る。背中にホカロンを貼り付け、湯たんぽを抱きながら。その夜は熱にうなされるような感じで一度目が覚めた。ああ、これは39度くらいまで上がってそう……。

翌朝、夫はほぼ回復していたが私はまだ熱が下がらず、おまけに手足の裏に水疱の発疹がちらほらと出てきた。ああ、もうこれは手足口病そのものじゃないですか。その日は漢方薬を服用しながら一日中ベッドで過ごし、やっと熱が下がってきたのはさらにその翌日だった。微熱まで下がってきたものの、ベッドに横になりながら実家とライン電話をし、えらい目にあったと手足口病の話をする横で、病気を持ち込んだ張本人の子どもは跳ね回って遊んでいる。やれやれ。

さてその日の夕方、ベッドで子どもに本を読んでいた私のところに買い物から帰ってきた夫が来て、呆然としたように言った。「さっきコロナ検査を受けたんだけど、陽性だった……」「うそお!」というのが私の第一声。えーと、じゃあこの発熱もコロナ? でもこの間夫が発症した時はコロナ検査は陰性だったし、私の手足には発疹も出ているのだ。偽陽性とかの間違いじゃない? と半信半疑だったが、一応検査しておくか、とセルフキットで私も検査してみる。いつものように一本線しか見えてこないから、ほらね、とそのまま判定プレートを仕事机の上に放っておいた。しばらくして夫がどうだったと聞くから「そこにあるけど見てみたら? 陰性だと思うけど」と言ったら「うっすら陽性って出てるけど……」「えっ!?」

初めて見たその二本線を前に、それから私と夫はぐるぐる頭を巡らせた。すでに検査所でPCR検査まで受けさせられてきた夫の結果は翌日には来るという。私は明日、子どもと一緒に検査を受けに行くことにする。保健所からも連絡があるだろうし、いずれにしても夫はもうすでに自宅隔離が決定なわけで、となると次週の仕事のキャンセルと交代要員を探さなければならない。私は特に外出の仕事の予定はないが、子どもはこのまま冬休みに突入決定である。そして陽性が確定すれば、これまでワクチン未接種だった私たちには半年間の罹患証明が発行され、ワクチン証明の代わりになる。そう、その証明書のためにも、私も早いうちに検査して陽性確定をもらわなければならない。

そんな話をしながら、なんて狂った話だろう、と私も夫も皮肉気味に笑った。本来、病気に罹ったならその症状のことを気にしなければならないのに、私たちの頭に一番先に浮かんだことが罹患証明書のことだなんて。この罹患証明書が欲しくて、わざと罹ろうとする人がいるという話も聞いたことがあるけど、結局のところ、この馬鹿げたワクチンパスポート制度のために、こんな思考になるわけだ。

とはいえ、私たちだってコロナウィルスを甘く見ているわけではない。だからPCR検査が終わっている夫にはすぐに北里大学が治験中の「虫下しの薬(わかる人にはわかると思いますが)」を飲ませた。私もすぐに服用したかったが、これが効きすぎて明日の検査で陰性になったら困ると考え、PCR検査後に服用することにする。ああ、この馬鹿馬鹿しい制度に振り回されていることの愚かさ。

それにしてもいったいどこで感染したのだろう? 嘔吐症状があった日は夫はコロナ陰性であったし、その前日から子どもは自宅待機だし、その直前に受けた保育園での検査も陰性だったのだ。私もその前日までの検査は陰性だったし、その後は誰とも会っておらず買い物にも出ていない。となると、手足口病で弱っていた夫がコロナ検査所で拾ってきたのでは? という推論が潜伏推定期間と照らし合わせても確実そうだ。これまで何度ひどい風邪を引いてもずっとコロナ検査は陰性だったのに、検査に行った先で感染するなんてよっぽど体力が落ちていたということか。

やや不安を抱えつつも、翌朝、ほぼ熱の下がっていた私は子どもを自転車に乗せ、極寒の中、検査所へ行った。週末ということでそこそこ人の並んでいた検査所の列に震えながら並ぶ。やっと順番が来るも、まずは抗原検査を受けなければPCR検査は無料にならないというので二人で受ける。その数十分後に携帯に届いた結果は、私はやはり陽性、子どもは陰性。なので再び列に並び、私だけオンラインでPCR検査の受付登録をして、同じ検査担当者にやってもらう。週末なので結果は週明けになると思います、と言われるが、まずはやってもらっただけでも安心した。しかしここまでになんだかんだで家を出てから2時間。病み上がりなのにと、心の中でこの状況を毒づく。寒いよー、と子どもと二人で叫びながら自転車で風を切って家まで戻り、温かい味噌汁の残りと電子レンジでチンしたホカホカご飯を食べていたら、心も体もゆるんできた。おいしいご飯、それも和食は体に優しいなあ、と医食同源を感じながら味噌汁を飲む。そして食後、私も例の薬をやっと服用する。臨床医療現場では効くと言われているのだし、用量を守れば副作用はないと言われているのだから、効くも効かぬもお守り代わりでと思って飲み込む。

夫の携帯には昨夜遅くにすでにPCR検査の陽性結果が届いていた。週明けと言われていた私の検査結果も、その日の夜中には携帯に届いていた。陽性確定である。友人数人に、これらの旨を簡単にメッセージで伝えると「おめでとう! これで自由だね!」という言葉が先でその後に「お大事に! 手伝うことがあれば言って」とのありがたい言葉が続く。こんなコミュニケーションも、その意味がわからない人からすれば気の狂ったものに見えるだろう。

そして週明けの午前中、早速夫のところに保健所から電話が来た。まずは体調確認、そして自宅隔離や期間についての説明、感染したと思われる経緯やその前後の接触者の情報、私たちの基本的な健康状態、つまり基礎疾患の有無や年齢、ワクチン接種の有無などの聞き取りと登録を進める。いつもはドイツ政府の政策について不信も不満も大いにある我が家だが、市の保健所の対応は今回、とても高く評価したい。担当者の親身な対応もさることながら、週末にも関わらず半日ほどで結果が届いたPCR検査の迅速なシステム、その後も数日ごとに体調確認の電話もあった。もっともこれは、高齢者や基礎疾患のある陽性者、そして我が家の場合は夫がワクチン未接種で50歳以上という「リスクグループ」に分けられていたからとのことで全員にあるわけではないそうだが、体調に不安があれば、保健所内に待機している医者に電話相談もできるとのことだった。ちなみに同時期に罹患していたバイエルン州の親戚いわく、あちらは医療崩壊状態のせいか、検査結果が届くまでに3〜4日かかり、濃厚接触者の確認や陽性者への聞き取りも隔離終了間際になってやっと来たとか。医療体制は地域によって事情が違うようだ。

幸い、私たちの体調は陽性結果が出た当日のみ軽い頭痛、そして軽い咳、私は微熱が時々、という状態が5〜6日ほど続いただろうか。私の場合はいつもの周期で月経が来てしまったので、その時は体力が落ちていたせいかいつもよりも月経量が多くてしんどかったが、以降はスッキリ回復し、後遺症もなく今に至っている。ちなみにデルタ株だった。

子どもも初めの検査では陰性だったものの、1日経ってから鼻水をたらし始めたのでPCR検査をしてもらったら陽性となり、まだワクチン接種もワクパス制度も対象年齢ではないのだが罹患証明を出してもらった。で、症状はその鼻水1日だけで終わった。子どもは本当に強い……。

我が家は常に買い置きしているので大概のものは家にあったが、今回は友人たちが生鮮食品の買い物を申し出てくれて、おかげで何も困らない隔離生活だった。陽性になったことを笑い飛ばし、大概は重症化しないから大丈夫だと励ましてくれ、でも療養のアドバイズをくれたり、買い物を手伝ってくれたりと、理解ある友人たちに恵まれたことに本当に感謝した。ワクチン接種の有無に関わらず、陽性者の8割上は無症状か軽症という話を知ってはいても、やはり不安になる気持ちはあったわけで、この友人たちのサポートが大きな心の支えになった。そして市の行政の対応にも温かさを感じた。

さて隔離中となった今年の我が家のクリスマス。ツリーは幸いすでに買ってベランダに置いていたので準備万端。クリスマスイブにはいつもチキンを焼くのだが、この日は生理などが重なって怠さマックス、翌日に延期。夕方、子どもに読んでやっていた「スパゲッティがたべたいよう(角野栄子・著)」の中に登場する「おひさまいろのトマトソース」が食べたいというリクエストに従って、ささっと作ったトマトソースのスパゲッティと、友人がお見舞いにと差し入れてくれた緑色の大根のサラダがイブの献立だった。前日に一瞬消えかけた私の嗅覚だったが、この日のトマトソースはニンニクの匂いがプンプンしておいしかった。おいしいねえ、とソースをすすっていたその時、ラジオのニュースの終わりの時事論を聞いていた夫が声を上げた。「聞いてみろ! 初めてこのラジオ局で、ワクチン義務化についての反対意見を聞いたぞ! 初めてだ! カレンダーに印をつけたいくらいの驚きだよ」

その翌日。ドイツの国会で、国会副議長を務める与党/FDP党のヴォルフガング・クビキ(Kubicki)氏が、他の議員数十名とともに、ワクチン義務化への反対法案を提出したというニュースを読んだ。そしてクリスマス明けの月曜日、ドイツ全土各地で、ワクチン義務化に反対する大小のデモ「月曜日の散歩」があったと報道された。過激派と警察との衝突や逮捕者が出たという公共放送のニュースの一方で、多くの参加者は穏やかな一般市民で全国総勢で十数万人の参加となったと、SNSや地方紙が報じていた。

11月のコラム以降、書ききれないことが日々たくさん起きている。何をどうまとめて書いたらよいのか迷っていたら、仕事の締め切りと突然のこの状況が重なって年が変わってしまった。今年こそはもっとコロナ以外の話題が書けるといいのですが、なんか次回も早速この話題になりそうです。やれやれ。

写真:©️ Aki Nakazawa
隔離終わって無事年越しを迎えた我が家は、元旦に自転車で川沿いへ出かけました。その帰り道に見かけた市長からのクリスマスと新年の挨拶のプラカード。コロナのこともワクチンのことも書かれていない、いつも通りの定型の挨拶が私たちの心をほわっと温めてくれました。

今回の体験を書くにあたってしばらく悩みました。伝えたいこと、私たちが見ている現実がちゃんと伝わるだろうかという不安、もしかしたら一定の読み手の気を悪くするかもしれない微妙な話題。しかし、そういうことを気遣ってこれまで発言を控えていたばかりいたことにも、この社会の分断も起きた一因はあると感じています。コミュニケーションの取り方は慎重にしなければなりませんが、なんとかもっとオープンに話や情報が発信できるようになっていけばと願っています。別誌ですが、Madam Figaroの日本版オンラインサイトに在イタリアの日本人造形作家の方が毎月コラムを連載しており、とてもエレガントな文章で自然と隣り合わせの生活を綴りつつ、ワクチン未接種者の立場からいかにイタリアおよび欧州の社会がおかしなことになっているかを書いていて、勇気づけられました。

世界中どこも揺れている状況ですが、皆様の心身の健康と幸多い年をお祈りするとともに、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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