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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 トイレ一考—フランス、ドイツ、そして日本

中沢あき2023.07.26

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6月の終わりから子どもの保育園の夏休みが始まり、それに合わせて北フランスの海へ旅行に行った。昨年一昨年と、コロナ規制のことを考えるのが面倒で、日本へ行くとき以外は超えていなかった国境を久しぶりに越えての車の旅。近隣国といえど、街並みも言葉もセンスも違う、ベルギーやフランスの文化を肌で感じて、久しぶりに観光気分を味わった。きゃー、オッシャレ〜と気分が上がる!いやあ、いいねえ、旅するって。

さて、北フランスの海で数日のんびりしてドイツに戻ってくる途中、北フランスの街、リール郊外にある美術館に「イサム・ノグチ展」を見に立ち寄ったときのこと。入館してすぐに「もれちゃいそうー」と騒ぐ子どもをあわててトイレに連れて行った。戻ってロビーで涼んでいたら、同じくトイレから戻ってきた夫が「トイレの入り口のサイン、見た?ジェンダーフリーって表示、初めて見たよ」

そういえばトイレの表示の数が多かったような、と思い出し、展示を見終わった後にあらためてトイレに行ってみたら、ほんとだ。
まずトイレの少し手前の方向案内に、お馴染みの、まっすぐの足を持つ男性マークとスカートを履いた女性マークに並んで、右側半分だけがスカートを履いた形になっている人型のマークが表示されている。そしてトイレの入り口には、男性トイレと女性トイレのそれぞれの入り口に、この半々の組み合わせのマークも並んで表示されているのだ。つまり、自分を女性と認識して女子トイレを使用したければそちらへ、男性と認識して男子トイレに行きたければそちらへ、と、自分自身の判断に任されているということね。シンプルだけどわかりやすく、かつ、トイレそのものは今までの通りだけれども、使い方は自分で考えてね、と個人の判断に委ねるところがフランスというか、ヨーロッパの個人主義らしい。もっともドイツではこの手のマークはまだ見たことがなかったので、お!フランスは一歩進んでいるのね、と感じたが、この美術館は近代現代美術館であるから、その辺りの考え方も先を行っているのかもしれない。いずれにせよ、公共の施設のことである。

このトイレマークを見たときにふっと思い出したのは、そういえば東京でもこんなトイレの話が話題になっていたな、ということ。東急歌舞伎町タワー2階のジェンダーレストイレの話題だ。なんでもこの2階のフロアだけは、男性トイレ、そしてもう一つは男性用、女性用、多目的トイレ(バリアフリーのこと?)と誰でもトイレ(ジェンダーフリーということ?)を兼ねたジェンダーレストイレだけがあるという。このジェンダーレストイレにはつまり、男性も入ることができ、となるとこちらにしかトイレがない女性は、たとえ個室で分かれているとはいえ、手洗い場などで一緒になったら気を遣うし、はては性犯罪が起きる可能性も指摘されているとか。

この話をあらためて思い返して、もう一度思う。こういう発想がすっごく不可解。これに加えて、女性専用トイレがあるなら話はわかるのだけど、なぜ男性だけ専用トイレがあって、女性はまとめて一緒くたにされるのか?

多目的トイレはその名の通り、用便以外の目的で使いたい人もいるわけで、まあ多目的に使えるトイレで誰が使ってもいいだろう。誰でもトイレも、まあそういう名前がら誰が入ってもいいんだろうけど、狭い店舗で女性男性それぞれのトイレを設置できないという状況ならともかく、そんなに大きな施設でこれを作る意味がわからない。
と書いてハッとした。たとえばフランスみたいに、個人の判断に委ねられ、その判断を周囲も受け入れる、という個人主義が成立している社会なら、あの美術館のようなトイレの表示だけで問題は解決する。でも日本は、ぱっと見、顔立ちや体つきが男性っぽいけど女性のトイレに入れば、または女性っぽいのに男性トイレに入れば白い目で見られる、という状況が起きかねないゆえに、「誰でもトイレ」(ジェンダーフリーって言えばいいのにね)を設置しなければならない事情があるんじゃないだろうか。

とはいえ、それらを女性トイレの方にまとめる、という時点で、これ、考えたの男性だよな、とやっぱり思ってしまう。新しい時代に沿うトイレを作ったつもりでいるんだろうが、結局のところ、マイノリティに対する配慮や想像力がやっぱり欠けてるんだよね。

休暇の前に仕事で、とあるドイツの有数メーカーの大工場へ行った。重工業の工場で、働く従事者はすすけた作業服を着た男性ばかりの、いわゆる3Kの現場である。トイレに行きたくなって場所を尋ねると、食堂にあるというから行ってみた。食事を取っている男性作業員たちの視線が一斉に私に向く。そりゃそうだ、スニーカーにカーゴパンツのカジュアルな姿とはいえ、ピンクのブラウスを着た私は明らかに場違いである。レジに座っているおばさんがそこではただ一人の女性で、彼女にトイレの場所を訊くと、部屋の隅を指差して私に鍵を渡してくれた。そう、女子トイレには鍵がかけられているのである。入ったトイレは一人用の広めの個室できれいに掃除されている。内側から鍵をかけながら、女性スタッフも働いているイメージを企業ウェブサイトでは見ることもできる有名な企業でも、女性の数が少ない現場ではこういう対策があるのだなと現実を垣間見た気がした。それは前時代的とか女性蔑視だとか、ということとは違う気がした。少数派を守るという配慮というか、男性社会である現場で、彼らなりの対策をしている、ということだろうか。もちろん、鍵をかけないでも安全な、というのが理想なのだろう。でも残念ながら、ジェンダーを問わず、少数派というものには危険にさらされたりする可能性が常にある。そういう意味での配慮を感じたのだった。

現実についての想像力が欠けたトイレと、その配慮があるトイレ。工場のトイレは簡素だったけど、清潔で安全で、私はその訪問中、2度もそのトイレを使ったのだった。

 

 

©️ Aki Nakazawa

北フランスはリール郊外の美術館、LaM/Lille Métropole Musée d'art moderne, d'art contemporain et d'art brutのトイレの表示。実にシンプルでわかりやすく、ノンバイナリーはそんなに複雑なことじゃないよ、と示しているようでもあります。そうあるべき、と思わされる小さな発見でした。

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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