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映画・ドラマに映る韓国女性のリアル (12) 女の友情? 愛情? 映画「ソウルメイト」

成川彩2024.01.20

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2月に日本で公開されるミン・ヨングン監督の映画「ソウルメイト」は、1988年生まれの2人の少女が出会い、友情をはぐくみ、すれ違い、大人になっていく過程を描いた。韓国でもLGBTQ+を描いたクィア映画は徐々に出てきているが、「ソウルメイト」の友情とも愛情とも言える2人の特別な関係は、その枠にもはまらない。



「ソウルメイト」の主人公ミソを演じるのは、ドラマ「梨泰院クラス」(2020)のヒロイン、チョ・イソ役で知られるキム・ダミ。ミソの唯一無二の親友ハウンは、チョン・ソニが演じた。2人の出会いは小学生の時。ソウルから済州島へ転校生としてやって来たミソ、先生にハウンの隣の席を指定されるが、荷物だけ置いて教室から飛び出す。



2人の性格は正反対。ミソは自由奔放、猫の絵を描いたら、猫の心まで描くような型破りな子だ。一方、ハウンは周りの期待に応えようとするタイプ。互いに惹かれあい、親友になる。母子家庭のミソは転校を繰り返していたが、母がソウルに戻ることになっても済州島に残り、ハウンとハウンの両親と家族のように過ごす。

だが、高校生になってハウンに恋人ができると、2人の関係はぎくしゃくし始める。ミソはハウンの恋を応援していたが、ハウンの恋人ジヌ(ピョン・ウソク)がミソにも好意があるのを知ってミソが2人から距離を置き始めるのだ。ミソは高校を中退して、ソウルへ行く。食べていくので精いっぱいの生活になるが、そんなことはハウンには伝えず、孤軍奮闘する。一方のハウンは地元の大学に進み、地元の学校の教師になる。幼い頃から絵を描くのが好きだったが、父親に画家では食べていけないと言われて育った。教師になってもあきらめきれず、ジヌに教師を辞めて絵を再開しようかと相談するが、反対される。



私がこの映画で最も記憶に残る言葉は、親の望むように生きられず謝るハウンに、ハウンの母が言った言葉だ。「なぜ人の顔はそれぞれ違うか分かるかい? ひとりひとり別の生き方をしろってことよ」。自分の思うように生きるよう母に背中を押してもらったハウンはソウルへ行き、再び絵を描き始める。そしてミソとも再会する。ハウンの人生を型にはめようとするのが父親やジヌで、そこから解放してくれるのが母親やミソだったのも印象的だった。

韓国は日本に比べてLGBTQ+に関しては保守的な傾向が強いが、それでも近年は映画やドラマで少しずつ描かれるようになってきている。近年のクィア映画の代表作としてはイム・デヒョン監督の「ユンヒへ」(2019)がある。2019年の釜山国際映画祭クロージング作品として注目を浴びた。ユンヒ(キム・ヒエ)とジュン(中村優子)、日韓の2人の女性の物語だ。かつてジュンが韓国にいた頃、ユンヒと幸せな時間を過ごしていたが、ユンヒの方から別れを告げた。ユンヒのジュンへの気持ちを知った親が、ユンヒを精神病院に通わせたのだ。ジュンからユンヒへの手紙がきっかけとなり、ユンヒは娘と共にジュンが暮らす小樽を訪ね、20年ぶりの再会を果たす。

ドラマ「梨泰院クラス」では、主人公の同僚マヒョニ(イ・ジュヨン)がトランスジェンダーだった。マヒョニが料理対決でその偏見を克服しようとするシーンはドラマ全体のクライマックスのようだった。ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」(2022)では、レズビアンの女性が、本心を隠して親の勧める異性と結婚するエピソードが出てきた。結局結婚はうまくいかず、親に本心を打ち明ける。この2本のドラマは多様性の尊重がテーマの一つだった。

「ユンヒへ」でも「梨泰院クラス」「ウ・ヨンウ弁護士」でもLGBTQ+に対する偏見と葛藤が描かれたが、「ソウルメイト」では、ジヌがミソとハウンの絆の深さに驚くようなシーンはあっても、2人の関係は特にカテゴライズされることなく、友情を超えたミソとハウンの関係をあえて言葉で表現する必要もないように感じた。ミソとハウンは、ミソとハウン。結末を語るのは控えるが、悲しくも希望を感じるものだった。


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成川彩

成川彩(なりかわ・あや)

韓国在住文化系ライター。2008~2017年、朝日新聞記者として文化を中心に取材。2017年から韓国に渡り、ソウルの東国大学大学院で韓国映画について学びつつ、フリーのライターとして共同通信、中央日報など日韓の様々なメディアに執筆。2020年からKBS WORLD Radioの日本語番組「玄海灘に立つ虹」で韓国の本と映画を紹介している。2020年、韓国でエッセイ『どこにいても、私は私らしく(어디에 있든 나는 나답게)』出版。

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