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映画・ドラマに映る韓国女性のリアル (21) 戦後80年、ドキュメンタリー『よみがえる声』日本公開へ

成川彩2025.02.28

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国内外で受賞が続く在日コリアン2世の朴壽南(パク・スナム)監督と娘朴麻衣(パク・マイ)共同監督のドキュメンタリー映画『よみがえる声』が、日本公開に向けてクラウドファンディングを始めた。

1935年生まれの朴壽南監督は今年90歳になる。被爆者や慰安婦、沖縄戦など在日コリアンと戦争にまつわるドキュメンタリー映画を撮ってきた監督だが、未公開のフィルムもたくさんあり、10代の頃から母の上映活動に同行してきた麻衣さんと共にその記録と向き合う過程が描かれたのが『よみがえる声』だ。2023年の釜山国際映画祭で上映され、ドキュメンタリー部門で最優秀賞を受賞したほか、ベルリン国際映画祭にも招待され、最近では2月に開かれた座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルでも大賞を受賞した。『よみがえる声』は日韓共同制作の作品で、韓国では2024年11月に公開され、59カ所の映画館で上映された。韓国の映画雑誌『CINE21』が選ぶ2024年の映画ベスト10で6位に入るなど高く評価された。

私自身が初めて朴壽南監督の作品を見たのは2018年、渋谷のユーロスペースで開かれた日大映画祭で上映された『沈黙 立ち上がる慰安婦』(2017)だった。印象に残っているのは、上映後のトークに朴壽南監督が来られなくなり、代わりに麻衣さんが登壇したことだ。来られなくなったのは、神奈川県での『沈黙』上映会で右翼団体の妨害行為を受け、心身共に疲弊しているということだった。右翼の妨害を受けながらも高齢の朴壽南監督が活動を続けているのは、麻衣さんの支えが大きいことをこの時実感した。

『よみがえる声』というタイトルにもあるように、「声」に着目するのは、朴壽南監督が視力を失いつつあるからでもある。麻衣さんの助力なしにはできない映画だった。麻衣さんが質問し、朴壽南監督が答える母娘の対話には在日2世と3世の世代の差が表れた内容もあり、ただ昔の記録を掘り起こすだけではない現代の視点も感じられた。

2018年の日大映画祭のテーマは「朝鮮半島と私たち」で、『沈黙』以外にも在日コリアンにまつわる映画がたくさん上映されたが、その中に大島渚監督の『絞死刑』(1968)もあった。在日コリアンへの差別や死刑制度の問題を指摘する映画で、主人公の死刑囚は1958年の小松川事件の犯人、在日コリアンの李珍宇(イ・ジヌ)をモデルにしている。女子高校生が殺害された事件だ。朴壽南監督が世間に知られるのもこの事件がきっかけだった。李珍宇と交わした往復書簡が『罪と死と愛と』というタイトルで1963年に出版され、ベストセラーとなったからだ。この時の経緯も『よみがえる声』に出てくる。

朴壽南監督がドキュメンタリー監督となるのはこの後のことで、広島や長崎で被爆した在日コリアンの証言を映像に収める作業を始める。二重の差別に苦しむ人たちの声をドキュメンタリー映画『もうひとつのヒロシマ-アリランのうた』(1986)を通して知らしめた。続いて沖縄戦へ連行された朝鮮人や慰安婦の実相を明らかにしようと沖縄や韓国で取材、撮影を重ね、『アリランのうた-オキナワからの証言』(1991)を発表。『よみがえる声』では1985年から91年にかけて記録した映像と音声の中から未公開のものを復元した。韓国映画振興委員会の独立長編芸術映画支援作品に選定され、日韓のスタッフが新たな取材や撮影を行って完成に至った。

日本では戦後80年の夏の公開を目指し、配給や宣伝にかかる費用をクラウドファンディングで募っている。目標金額は400万円で、5月15日までに集まった金額がファンディングされる。クラウドファンディングのページは(https://motion-gallery.net/projects/VoiceofTheSilenced)。

写真:朴壽南監督

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成川彩

成川彩(なりかわ・あや)

韓国在住文化系ライター。朝日新聞記者として9年間、文化を中心に取材。2017年からソウルの大学院へ留学し、韓国映画を学びつつ、日韓の様々なメディアで執筆。2025年博士課程卒業。2023年「韓国映画・ドラマのなぜ?」(筑摩書房)、2024年「映画に導かれて暮らす韓国」(クオン)を出版。2023年に鶴峰賞言論報道部門大賞を受賞。

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