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動物のお家

中沢あき2018.01.18

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遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます!

今年は戌年。年末年始を過ごした日本では、広告やテレビなど、あちこちで柴犬を見かけた。かわいいもんね、柴犬。ドイツでも最近、柴犬や秋田犬の人気が出てきているらしい。正月番組には他にも、干支にちなんでいろんな犬が登場していた。
そういえば日本のテレビ番組は、動物ネタを取り上げることが多いと思う。かわいらしい動物とか、おもしろ顔の動物とか、特にペットの投稿映像とかね。猫カフェの話のように、日本人の動物好きは海外でも有名だ。上野に生まれたパンダの赤ちゃん、シャンシャンフィーバーもすごかった。ムクムク、コロコロしたパンダの赤ちゃんはたしかにかわいいが、上野公園に並んだ屋台のシャンシャンフェスティバルだなんて、そんなにパンダが好きなのか!とある意味感心した。

そんな中でふと気になったことがあった。あるバラエティ番組が紹介していたのは、服を着せられたり、人間の子供さながらにベッドに寝かしつけられたりしたペットたちの愛くるしい様子。ふわふわのその子たちはかわいいのだけど、その画面の片隅のテロップには「インスタ映えするペット写真」とあって、見ているうちになんだか嫌な気分になってチャンネルを変えた。たしかに飼い主は愛情をたっぷり注いでいるんだろう。でもインスタ映えって…、ペットって他人に見せるためのものだっけ?裏を返せば、飼い主の自己満足のための見せ物、みたいで嫌だなと思ったのだ。そんなことを口に出せば、ひねくれていると思われるかもしれないけれど…。

しばらく前にドイツのペット事情についてのリサーチをしていたとき、ドイツにはインスタ人気ペットがいないのかを訊かれて探してみたのだが、意外やこれが見つからなかった。ドイツ語のサイトであっても、登場するのはアメリカやイギリスなど、別の国のスターペットたちで、ドイツのスターは見つからなかった。
そのときはただ不思議に思ったのだが、この日本の番組を見るうちにふと思い当たった。こんなふうに着飾れさせられたりするペットって、そういえばドイツでは見かけない。それは、ペットは飼い主のおもちゃではなく、ペット自身にも生きものとしての権利があり、飼い主のエゴを押し付けるべきじゃない、という考えが一般的だからだろう。
飼い主のエゴといえば、日本で捨て犬や捨て猫の殺処分が認められているのは、ペットは飼い主/人間の所有物である、という意識が根底にあるからじゃないだろうか。

ドイツにはやむを得ない一部の安楽死を除いて、動物の殺処分は認められていない。
捨てられたペット、または捨てられそうになっているペットを引き取るティアハイムという施設が全国にある。「動物の家」という意味を持つ名前のこの保護施設では、引き取られた動物は次の飼い主が見つかるまで、またはもし見つからなくても終生をそこで過ごすことができる。

一部の公的な助成金の他は、一般の寄付や多くのボランティアスタッフで運営されるティアハイムの経営はどこも大変らしい。なのに、そんなにどんどん動物を引き取って大丈夫なのかとも思うが、驚くことに多くのティアハイムでは、やってきた動物が1年以内に引き取られる確率は9割を超えるという。

ちなみにドイツでは、人気の飼い犬の種類のトップ2はラブラドールレトリーバーだが、それを超えるトップの頭数はなんと雑種!その背景には、多くの人がブリーダーからではなくティアハイムからペットを引き取るという事情がある。とはいえ、ティアハイムでも誰もが簡単に動物を引き取れるわけではなく、希望した動物と新しい飼い主候補の相性や、飼い主として責任をもってその飼育環境を整えられるかも、ティアハイムの担当者が相談を進めながら確認した後に初めて引き渡されるのだ。
ちなみにドイツには、犬や猫を販売するペットショップがほとんどない。これはペットショップであっても、犬や猫などの動物を置く環境の条件が法律で厳しく規定されており、これを満たす店を作るのが採算に合わないから、ということだそうだが、近年、近隣の国から安く輸入された子犬や子猫を売るペットショップが現れ、物議を醸している。規制違反ギリギリの環境で動物を売ること、また安い値段ゆえに安易に購入する飼い主が増えているからだそうだ。

そう、ペットも購入したら好きにし放題、でなはい。特に犬を飼う条件は法律や条例で厳しく決められている。家に独りで留守番させない、犬の学校へ連れていってしつけをする。ドイツでは飼い犬には税金がかかるので、犬税も収める。狩猟犬などの犬種では損害賠償保険の加入も義務付けられる。

外で飼うなら充分な広さのあるケージを用意する、などなど。家の中に閉じ込めっ放しにしたり、留守番させたりすると、虐待を疑い有りということでご近所さんから通報され、ティアハイムに送られてしまうこともある。とまあ、そんなに簡単に気軽に飼えるものではないのだが、それは生きものの命の尊厳を考えれば当たり前のことで、それゆえに「ペットは家族の一員」という意識が生まれるのだろう。

一方でこの頃は、前述のような悪徳業者の所で後先を顧みずに買ったペットを、飼えなくなったらティアハイムへ、と預け捨ててしまう無責任な飼い主も増えているそうだ。捨てられたペットを保護する為の施設が捨てやすい環境を作る一因になるとはなんとも皮肉だ。欧州最大の規模と言われるベルリンのティアハイムのホームページにはこうある。「飼い主としての責任をもう一度考えてみましょう。ペットを手放すことは、家族の一員を手放すことなのです」

すべての動物が幸せであるために、というモットーのもとに作られた動物保護法という法律と、そしてティアハイムというシステムは、動物に対する人間社会の責任である。
特にペットとして人間と共生させるならば、身内の一員としてその権利を認める、という考え方をドイツらしい、と文化の違いに感心するだけなら、それはとても残念なこと。猫カフェや忠犬ハチ公の話が有名になるくらい、日本は動物を愛する国、との印象がある一方で、犬猫の殺処分が行われているという事実とのギャップに、ドイツ人は衝撃を受けるそうだ。

SNSやマスコミにそそのかされて、流行のペットを安易に飼っては捨てる、なんてことをしていたら、いつかバチが当たるぞ、と、ペットショップに群がる家族連れをテレビで見て、思ったのだった。

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知人の飼い猫は、頭にできた腫瘍を取り除く手術を受けたものの、元気に動くことがなくなってしまったのだとか。痛かったのよね、と飼い主に頭をなでられて目を細めていた猫ちゃん。年を取っても病気になっても、家族の一員として大事にされているのね。ちなみにドイツでは、こうした医療手当を受けるためのペットの保険も人間並に充実していて、ドイツ社会におけるペットの扱われ方がかいまみえます。

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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