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私はアンティル vol.40 アンティル・ミーツ・ちんこ7 ~男が嫌い編前半

アンティル2006.04.06

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温泉に入ることを目的の一つとして、長い月日と多額の費用を費し胸を除去手術をした私は、男湯に入り始めて1年後、“もうけして男湯には入るまい”と、心に誓わずにはいられないほどになっていた。

私をそう誓わしたもの。それは、ゴーヤ印の温泉で出会ったパンチパーマのヤンキー軍団とヘビや般若の入れ墨入りのチンピラだ。昼間の混雑した温泉で権力争いをする男達は、チンコを丸出しにして、何かのために堂々と自分達の存在を主張し、戦っていた。周りに大勢の人がいることも忘れて。

そんな男達を目の当たりにしてから、私は男湯に嫌悪感を抱くようになってしまった。そして唾がその嫌悪感に拍車をかけた。この温泉の男達は、合い言葉を呟くようにみんながぺっぺぺっぺと唾を吐いたのだ。誰かとすれ違ってぺっ。カラダを洗い終わって立ち上がった時にぺっ。

『男が詰まった男湯に、もう私は浸かれない』

私はこの日を境に男湯と決別した。そして私は、男湯に入れなくなった自分と出会い、自分を知った。そう、私は男が嫌いだったのだ。

『困った・・・』

温泉の味を覚えた私に禁断症状が現れた。あの全身の筋肉が緩むような心地よい感覚が忘れられない。

『よし! チャレンジだ!』

私は欲望を押さえられず、女湯に入ることを決意した。
髭を剃って、深々と帽子をかぶり、友達の背中に隠れながら、私は日帰り温泉のフロントを通過する。「まんこがあるんだから脱いじゃえば大丈夫だよ!」

友の励ましが私の背中を押し出す。私はロッカーを開けると同時にズボンを脱ぎ、頼りのまんこを誇示した。そして、ない胸をタオルで隠しながら上着を脱いでロッカーに押し込んだ。「用意はいい?」友人の顔もどこか緊張している。
「うん」私は喉を締め、出来るだけ甲高い声で返事をした。その声がもうすでに怪しい。脱衣所から温泉に続く廊下は約10メートル。深夜だというのに脱衣所には10人ほどの人がいる。ソロソロ。私はなるべく目立たぬよう腰を丸めて小走りに目的地を目指す。『よしもうすぐ温泉だ!』そう思った時、温泉から出てきた人と目が合ってしまった。

『はっ!※★△(男!)』

その人は私と目があったとたん、胸にタオルをあて、顔を強ばらせた。

『やばい!』

警戒するその人を背中に残し、私は温泉へ突進していった。
「ねぇあの人、男じゃない?!!」
「見て見てあの足ooo!」
温泉に入ると、みんなが私に注目した。かなり危険な状態。
この時の私のいでたちは、短髪、髭なし、足毛ありというもの。
なぜ毛深い男並みの足毛を剃らなかったかというと、ホルモンを打つ以前からこの状態の毛深さで、この足をさらし、ブルマを履き、半ズボンで街に出ても「あの人、女じゃない?」と言われてきた私にとって、この毛は“男である、女である”という印にはならない、私の一部であると感じていたからだ。しかしこの毛がよくなかったらしい、私がお風呂から上がって休憩スペースでくつろいでいた時、制服姿の男が現れ周りにも聞こえる声でこう話し始めたのだ。

男「お客様失礼ですが、男性の方ですか? 女性の方ですか?」
私「オンナですけど。なんでそんなこと聞くんですか!」
男「女性風呂から男性が入っていると苦情がありまして。」

あたりの人たちがこちらを注目しているのがよくわかる。

私「性同一性障害でカラダは一部手術したけど戸籍は女です。保険証見ます?」
男「はー、しかしですね、苦情がooo」
私「じゃあ私は男湯に入ればいいってことですね?!」
男「いや、それも困ります。」
私「じゃあ、もう来るなってことですか?」
男「そういうことになりますooo」

私の怒声が館内をこだまする。
責任者と名乗る男がなぜこの場所で私に話かけたのか、なぜ人のいない所で話す努力をしなかったのか、それがわかったから私は怒りを押さえられなかった。苦情に対応したという事実を見せるためのデモンストレーション。それが目的だとわかった瞬間、私は問題の核を忘れて怒りに身を任せてしまった。

女湯のオンナ達は男湯の男達と明らかに違う。女湯のオンナ達はこの場においても視線から解放されることがない。シャンプーをしていても、背中を向けていても異質な私を見つける目を持っていた。安心しきった平和な空気の中で裸になり、えぐらえた私の歪な胸を真近に見ても気にもしなかった男達とあまりに違うオンナ達の目。私は目の中にある警戒心を無視し自分の正当性を女湯に押し付けたことを後悔した。

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アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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