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地下アイドルとして私たちが受けていた仕事は本当にたくさんありました。前回語ったように、メインは事務所主催の撮影会で、ほかにはいろんな撮影会に出ることでしたが、ファンミーティングという名でファンと名乗った男たちとの同伴旅行や、有料のビデオチャットサイトでチャットをしたり(要はチャットレディー)、アイドルグループ同士でチャットのアクセス人数を競うチャットイベントに参加されられる等、「女性」としてお金になり得る全てのことにあっちこっちと出されました。(それに加えダンスを完全に覚えた子たちは週2〜3回、夜ライブにも出演します)

旅行のことは正直、マザー牧場というオープンな場所だったので、私も気楽な気持ちで参加することが出来ました。その旅行は私がグループに入ってまだ日が浅かったので、私を含めまだアイドルになったばっかりの子たち(四期生)はまだ推しメンバーのファンが高額の旅行を申し込んでくれたわけでもなく、私達同士で群れて仲良くおしゃべりをしたりしただけでしたから、余計楽な気持ちで楽しめたのです。

しかし、そこで先輩たちがやっていたことは何というか……少し違和感を覚えました。牧場でプチ撮影会や動物たちとの触れ合いを終え、一緒に食事をするという普通の日帰り旅行でしたが、お土産屋の前で雰囲気が変わったのです。ファンの方々にあれ買って、これ買って、とタメ口で物をねだる人もいれば、男が自然に財布を出すように仕向ける人もいたのです。私が真面目過ぎるのでしょうか?私はその状況が理解しがたかったです。

私はその異様な状況を社長に話しました。そのときの会話は正確には覚えてませんが、大体こんな感じでした。あなたもほしいのがあれば、ファンにねだればいいと。

「私のことが好きで来てくださったファンの方々に……ですか?」と聞き返すと、「好きな女の子(アイドル)に買い与えるのが幸せだと思ってるやつらだから、それを楽しめばいいんだよ。むしろねだることが彼らのためになるし、そうやってファンを喜ばせることがアイドルとしての仕事の一種であるさ」という言葉が返ってきました。

それから数週間後、チャットサイトで地下アイドルのグランプリを決めるイベントが始まりました。確か私は他の撮影会に出ているかなんかで、そのイベントには出ていませんでしたが、グループの中の3人くらいが代表として参加していたことを覚えています。

その日スケジュールを終えて皆で集まると、私が今まで感じていた違和感の理由がいよいよ分かりました。私と同期の子で女子高生の女の子が「相手のチームは皆ビキニを着ててアクセスが凄かったですよね! だったら私たちもビキニを着ればよかったです!」と社長の前で悔やんでいたのです。つい数日前までもその子は……いや、私と同期だった地下アイドル歴の浅い女の子は皆、ビキニでの撮影を好んでいませんでしたから。それが成人男性による成人男性のための作られた社会によって、若い女の子たちは互いに競争するように仕向けられ、自らと「本来なら嫌だった道を選ぶ」ようになっている。それに気づきとても恐ろしかったです。

私はこれ以上水着の撮影はしたくないと、社長に話しました。もちろんあっさりと断られました。社長は弁護士の事をよく口にしていたので (今思うとそれも女の子たちをコントロールするための手段だった気がします)、他の女の子たちは嫌なことがあっても社長になかなか口答えが出来ていない状況でした。しかし私は通っていた大学に無料で法律相談が出来る大学専属の弁護士さんがいたので、まずそこに相談を受けることにしたのです。

その弁護士は事務所からやってもらったことが何もないため、いつ辞めても問題にならないと助言してくれました。私が働いた給料に関しては、裁判にかけることも出来るけど、時間と費用が大きくなるからやめたほうが良いと言われました。
話が少し変わりますが、オーストラリアではこういう場合、”No win, No Pay”と言い、簡単に説明すると弁護士が裁判で勝った後に加害者側にお金を請求する(負けたらお金は貰わない)という制度があるので、社会的に立場の弱い人でも簡単に法的な動きが取れます。女性たちが搾取されるのに、何も出来ない社会。だからこそこう言った悪い男たちが伸び伸びと生きているのではないでしょうか。

私はいろんなビジネスを回していた偉い人 (『被害者からサバイバーへと⑥』で出たあの方です) にもアドバイスを求めました。すると契約書自体が粗末すぎてちゃんとした契約書ではないと、無視して良いほどのデタラメな紙切れだと言われました。その根拠としてはまず甲が求めることばっかり書かれていて、一方的に不利な契約であること。そして契約を解除するときに弁償しなきゃいけない違約金などについても言及されてないと。そこまで言われるとさすがにほっとしました。

続いた水着の撮影で病み始めた私は、そのアドバイスを聞いてアイドルを辞めることを決意しました。するとそれから社長からのしつこい脅しとガスライティングが始まったのです。

「水着撮影があるってことは最初からお前も分かっていて同意した契約である」
「良い子だと思っていたのに、そうじゃなかったのか」等。

私は私が聞いた話を元に全部言い返しました。しかし人を利用する虐待者は嘘をつくにも堂々としています。自分はとても立派な弁護士のチームを雇っていて、その契約書は弁護士に書いてもらったものだから、有効な契約書だと言い張りました。契約期間も違約金も書かれていない契約書だなんて、今の私だったら鼻で笑い飛ばしたと思いますが、当時はまだ20代前半。社会経験も浅かったため、そこまでデカい態度を取られるとどっちが本当なのか分からなくなりました。また当時はまだ父のDVからのPTSDも残っていたので、電話越しに男性の怒鳴り声を聞くことはかなりの精神的なトラウマでした。

幸いそのときはすでに今のオヨメと付き合っていたのですが、恐怖で固まっている私を見たオヨメが私の携帯を奪い番号をブロックすることで事件は一段落。その後弁護士の助言の通りに、仕事を辞めると言う内容証明を書いて事務所宛に送りました。

私が辞めると宣言した直後、社長は私のブログのパスワードを速攻変え、私のアクセスを遮断しました。ブログのパスワードを社長とシェアすることも、コメントの管理すら社長の許可を得なきゃいけなかったことも全部、今は些細な行動までコントロールするグルーミングの一種だったとわかります。私はアメブロ側に身分証を提出し、そのブログを即削除して貰うようにお願いしました。

それから私は社長が怖くて、フリーでも芸能関係のことは一切出来なくなりました。オーディションに応募することすら怖くて、何にも挑戦出来なくなってしまったのです。辞める前から同期の子に辞めるかどうかで相談をしながらいろんな話を聞かされていたので、その恐怖はより大きかったです。正常なルートで卒業をしたとしても、社長はその後の芸能活動をいちいちと邪魔してくると。一人で活動を決めた○○ちゃんは、出演予定だったライブハウスのオーナーが社長に「まだ契約が終わってないうちの子だから、出演させるとお前に違約金を払わせる」と脅され、どのライブハウスにも出演が出来なくなったとか。私はそうやって何も出来ず、大事な一年を捨てました。

しかし私が受けた被害は他の女の子が受けた被害に比べるととてもちっぽけな物でした。

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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